第2章 ユメひとつ
あの日から2週間が経った。
世の中は夏休みという期間に入っている。
だから子どもが家にいる時間も長くなって審神者の仕事もままならない状態にはなっていた。
子どもが外出している間、ゲームをしている間、昼寝をしている間、習い事に行っている間、などなどなんとか隙間時間を見つけては行ったり来たりを繰り返し出陣計画と男士たちに声を掛けての健康観察なんかをしている。
ただ、そんな風に1日に細切れで何度も行き来しているので頭が追い付かない、光忠たちの作るご飯が食べられない、畑仕事すらできない、と変なストレスが溜まりはじめたころ。
ふと縁側でお茶を飲みながら喋っていた三日月が言った。
「主に負担はかかるかもしれないが、こちらで過ごす時間を今まで通り半日、向こうにいないのは15分程度、というのも可能、ではあるのだが」
「え?どういうこと?」
「審神者力というのはそういうものだ。ただとんでもなく力を使うだろうから、とても深く眠ってしまったりというのもあるらしいがな」
三日月の言っている意味はあまり理解できない。
もっと分かりやすくしてくれる人を求めて私は祈祷場に向かった。
「石切さん、聞きたいことがあるんだけど…」
先程三日月に聞いたことを訊ねてみる。
「そうだねぇ。まぁ無理ではないとは思うよ?主が望むのであれば、あちらの15分をこちらの12時間とすることも出来るはずだからね」
お、良いこと聞いたかも。15分だったらどういう状況でも捻出できそうだ。
私にとっての1日が今より長くなる分何かとキツいとか少し身体には負担がかかりそうだし、毎日となると大変かもしれないけど。
「ありがとうございます。うまくいくか判らないけど試してみる価値はありそう」
「ほんとにやるのかい?私はオススメしないけれど…。今みたいにこちらに来づらい期間は2、3日に一度様子見と出陣計画の見直し程度でいいんじゃないのかと思うのだけど」
さすがに夏休み中ずっと審神者の仕事を休むという訳にはいかない。
薬研の言っていた通り消えてしまわれたら後悔しか残らないだろうから。
「とりあえず一回やってみますよ」
石切丸にそう言い、祈祷場を後にした。
「主!待って…!」
最後石切丸は私に何かいいかけていたように思うが私はとりあえずこのことを誰かに話したくて本丸内を探し歩いた。