第20章 Don't worry,don't worry
石切丸が心配だけど、気に病んではいけない。
すごく難しい。
左手の薬指につけた指輪を回しながらひとり縁側でぼんやりしていると、
「慧ちゃんっ!」
清光が抱きついてきた。
「どう?傷」
「ん、もうほとんど平気。動かせるし」
そう言って左手を上げると、
「え?なんで…」
驚いた顔をした。
「なんかね、石切さんが霊力?っていうのを分けてくれたみたいなんだ」
「そう…なの?」
私の言葉で清光の顔が曇った。
「慧ちゃん、あのね」
何かを言おうとした清光を、
「加州」
近くで聞いていたのか三日月の声が止め、姿を現した。
「慧、心配は要らぬぞ。石切丸はすぐに戻る。だから気に病むなよ」
三日月もそう言った。
気に病むな。それがいちばん難しい。
石切丸が祈祷場に籠ってからの期間はどれくらいだっただろう。
2週間は軽く過ぎた。3週間経つのもそう遠くない。
内番ばかりの夏休みは終わりにして、男士たちには出陣してもらっている。
私の左肩の傷もほとんど癒えて痛みはあまりなかった。
僅かに引きつれる感じのする肌。
鏡に写してみたけどそんなに酷い傷ではなかった。
もう包帯も巻いていない。
あの日、石切丸が三日月に伝えてくれていたのだろう。
昼間の担当は清光一択だった。
お陰で昼も夜も私の心がざわつくことはなかったのだが、今の心配事は専ら石切丸のことで。
「どうした?」
またしても縁側でぼんやりしていた私に薬研が声を掛けてきた。
「もうじき昼だが仕事はもう済んだのか?」
お昼か…。
「え?もうお昼?」
「あぁ。広間はかなり準備整ってたぞ」
「清光は?」
いつもなら昼前には私にぴったりくっついていてふたり愛し合っているというのに。
「加州の隊はまだ帰っていないが…」
清光が戻っていない?
「てこずってんだろ」
薬研はさらりと言ったがそう言う問題じゃあない。
慌てて他の人はどうだと今日の出陣計画を見返した。
三日月と小狐丸もまだ出陣中。
一期とにっかり、それから鶴丸と光忠、大般若は別部隊だが遠征に出ていて戻りは夕方から夜の予定だ。
「まずい」
こんなことになるなんて考えていない出陣計画。
ぼんやりしすぎていたか?
「どうした?」
薬研が聞いてくる。