第20章 Don't worry,don't worry
翌朝。
薬研は寝室には来れないので審神者部屋まで連れて行かれ、そこで傷の具合を見てもらうことになった。
「どうだ?まだ痛いよな?」
「んーでも思ったほどじゃないかも…」
一晩たってかなり痛みのレベルは下がっている。
「ってもあの傷だぜ?いくら慧が痛みに強いって言っても…」
包帯をほどいた薬研が口と手を動かすのをやめた。
「まじかよ」
「ん?」
自らも首を動かして見てみようとしてみた。
「まだ気持ち悪い?」
「いや、逆だ。塞がってる」
傷口を見つめたまま薬研が言った。
「昨日は誰だ?」
「えと…石切さん…」
「本人どこいった?」
私をここに連れてきてくれたあとは知らない。
「とにかく、かなり良くなってる。とりあえず消毒と包帯は巻いておくが…それより石切丸が心配だな」
薬研がぶつぶつと言っている。
何があったんだろう?
傷の手当てを終えると、私の手を引いて審神者部屋を出た。
そして、連れて行かれた祈祷場。
「石切丸?おい!」
そこには蹲っている石切丸がいて、薬研が声をかけると、
「あぁ、薬研さんか。どうしたんだい?」
真っ青な顔を上げた。
「あんた何したんだよ?慧の傷が治ってる。霊力使いすぎたんじゃないか?」
霊力?
「ははっ、そんなに使ったつもりはなかったのだけどもね」
身体を起こした石切丸はまだ少し様子がおかしい。
「鬼の気は俺たちにとって毒だろうが」
「それでも守りたかったんだよ。ねぇ慧さん、私は暫く戦には出られそうにないんだ。出陣から外してもらうことはできるかい?」
「え、ぁ…あの」
「私は大丈夫。心配ないよ。少しここに籠ってしまうけど、必ず戻るから」
そう言って私と薬研を祈祷場から追い出して扉を閉めた。
「薬研…?」
「大丈夫だ。石切丸は慧に自分の霊力を分けたんだ。だが三日月のとは違って、消耗が激しいから戻るまでには少しかかる」
「私の、せい?」
「いや。だけど慧の力も必要だから逃げてくれるなよ?」
薬研に言われて頷いた。
「石切丸が自発的にやったことだ。気に病む方が長引く。信じて待ってやってくれ」
手入れとは違う何かが必要なのだろう。
私にはどのくらいの時間が必要なのかは判らないけど、待とうと心に決めた。