第19章 Get your Dream
今夜は長曽祢にお酌すると約束していたのだが、こんな状況になってしまった。
清光にまた次の機会にと伝えてきてもらい、私は石切丸に抱えられて寝室まで戻ってきている。
審神者部屋の布団よりは寝室のベッドの方が寝心地がよいから、というのと審神者部屋だと何も知らない男士がやってくる可能性があったからだ。
「痛むかい?」
「…まぁ…」
どのくらいの傷なのかは判らないけど、動かそうとする度に左肩はあり得ないくらいの痛みが走る。
「無理に起きなくていいよ。寝ていなさい」
もう日が傾き始めている。
寝室に戻ってからは石切丸がずっと傍にいてくれた。
「石切さん、他に用事があるのでは?」
「こんな状態の主を放ってまでの用事とは何だろうね」
ベッドの脇まで椅子を持ってきてそれに座り私に手を伸ばす。
石切丸の大きな手が私の頭を優しく撫でた。
「君は町に出るときに私たちからの贈り物を全て外して出たそうだね」
「…はい」
「どうして?」
「…皆の気持ちが、重くて」
チャラチャラしてる自分が嫌いだった、というのもあった。
「迷惑だったかい?」
聞かれて首を横に振った。
「凄く嬉しいんです。だけど、私はそこまでしてもらえる人間じゃない。似合わない」
自分の価値が判らない。
「実はあの贈り物にもきちんと役割があってね。着けていれば君の匂いは少しは隠せていたはずなんだ。だけど全て外していた、ということは完全に丸腰の状態だったからね。鬼からすればご馳走に見えただろうね」
石切丸が教えてくれる。
「そう、だったんですね」
「君が素直に嬉しそうにつけてくれたから安心していた。まさか外してしまうだなんて思いもしなかったよ。それに、そんな意味があるなんてできることなら伝えたくなかった」
石切丸は私が知らなくてもいいことは知らないままにしてくれようとしている。
そしてそれがたまに裏目にでる。
「すまなかった」
「そんな石切さん、私が悪かったのに」
「だが、慧さんの気持ちを悩ませてしまったのは私の提案がきっかけなのだろう?」
あれは全て石切丸の優しさだ。彼は初めから私を守ろうとしてくれていた。
「元々昼間の行為は感情がブレてました。こっちに戻ってからは少し情緒不安定なことが増えたかな、と思ってましたけど。だから石切さんのせいじゃないです」