第19章 Get your Dream
裏口を入ったところで安心して我慢していた涙が溢れ落ち、痛みもなにもかも限界だった私は膝をついた。
そんな私を支えようとしてくれた清光を振り払って、駆け寄ってきた鶴丸が抱き上げる。
「どうした?怪我をしているじゃないか」
「鶴さ…着物が汚れるよ?」
「着物よりも慧の方が心配だ。何があった?」
その言葉は私ではなく三日月たちに向けられていて。
「鬼に喰われた」
「嘘だろ?出たのか?」
「あぁ。ひとりで出歩いていた慧に寄ってきたらしい」
言いながら私を審神者部屋まで連れていけと指示を出した。
「清光ごめんね、洗って返すね」
「慧ちゃん…」
思った以上の出血で意識が薄れかけてる。
審神者部屋で布団に寝かされたところで、駆け込んできたのは薬研で、
「聞こえるか?」
言いながら私の着物を脱がせ止血を始めた。
「慧?おい、返事しろよ」
ぺちぺちと頬を叩かれたが、言葉が出ない。
「出血が酷いな。歩かせて帰ったのか?」
聞かれて清光が頷くと、
「三日月も小狐丸も居たんだろ?こんな出血してる奴を歩かせるバカがいるか!!?」
声を荒らげた。
「よく頑張ったな。もう少し頑張れよー」
言いながら手当てをしてくれる。
虚ろな目で見つめると、薬研の優しい目と合った。
「鶴丸、痛み止めを飲ませてやってくれ」
薬研がなにか薬を鶴丸に手渡し、鶴丸がそれを私の口に流し込んだ。
そして、水を自らの口に含み私の唇に押し当てる。
流れ込んでくる水で薬を飲み込んだ。
「どうしてあんたが抱えなかった?」
薬研がおろおろしている小狐丸に問う。
「そこまでとは…」
言った小狐丸に、
「これを見てもか?」
「っ」
私の傷口を見せたようだ。私にはどうなっているのか判らないが。
「慧は痛みを我慢するタイプの人間なんだ。そもそも母親は痛みに強い。そんなことも知らないのかよ付喪神サンたちはよぉ」
薬研の言葉に棘が混ざる。
「三日月もだ。いくらじじいでも好きな女ひとり抱えるくらいは余裕だろ?」
「すまない。俺もそこまでとは思わなかった」
「俺らは手入れ部屋に入って手入れすりゃ直るが、人間は違うことくらい刀だった頃から知ってるだろうが」
イライラしながらも確実に私の傷を手当てしてくれる薬研。