第19章 Get your Dream
あぁ、そっか。
みんなに迷惑かけてひとりで暴走して逃げ回った審神者の最期は、何か判らないけど人間ではなさそうなこのひとに喰い殺されるんだ。
どこかでもうそれでもいいかな、なんて思いながら目を閉じて身を任せかけた瞬間、噛みつかれていた場所からそのひとが離れ、そこから血が流れる感覚。
「主っっ!!」
遠退きかけた意識を集めて目を開けると、清光がいて、
「大丈夫?」
心配そうに見つめてくる。
その後ろで三日月と小狐丸が私に噛みついていたひとに刀を向けていた。
「なん、で?」
私が問うよりも先に刀を振るった三日月。
そして、そのひとは目の前で砂になって消え風に飛ばされてしまった。
「あーもう、血が出てるじゃん!!」
肩から流れる血を止めようと清光が首に巻いていた襟巻きで押さえた。
「どうしてひとりで出た?」
「…」
答えられずにいると、
「三日月殿が気付いてすぐに追いかけてきたのですが、少し遅かったですね」
小狐丸が眉を寄せる。
「とりあえず帰ろう?」
清光が手を引いてくれて、痛む肩を気にしながら歩いた。
帰り道、三日月は何も話さない。
小狐丸も清光も何も言わない。
清光の襟巻きに血が染み込んでいく。痛い。
吸いきれなかった血が腕を伝って流れ落ちた。
その直後、ピリッと張り詰める空気。
三日月と小狐丸が再び刀を抜いた。
「加州、主を守れよ?」
「言われなくても」
私を抱き寄せて清光も刀を抜く。
何が起こっているのかが私には判らないが、目の前で繰り広げられる戦闘。
三日月と小狐丸を掻い潜ってくるものを清光の刀が凪ぎ払った。
なんとかその場を収めた後、三日月が私に向き直り、
「お主の力は強すぎる。故に鬼だとか怨霊だとかの禍々しいものを引き寄せてしまう」
そう言った。
「町で襲われたのが鬼、今のが怨霊の類いです」
小狐丸が教えてくれる。
「鬼は嗅覚が優れておる。護衛を付けていなかったお主はさぞ美味そうに見えたであろうな。そして怨霊の類いはおこぼれに預かろうと血の匂いによってくるのだ」
三日月の目がキラリと光った。
「怖かったであろう。歩いて戻れるか?」
「…はい」
身体が震える。
本丸まではもう少し。
痛みと震えと戦いながら、必死で前に進んだ。