第19章 Get your Dream
三日月とふたりで汗を流したあと、なんとか自力で着付けた着物で昼食を摂り、手直ししてもらうために清光を探したのだが見当たらない。
そこへ、
「茶の湯に行くのか?」
内番着姿の美しい蜂須賀が声を掛けてきた。
「あ、はい」
答えた私に少し顔を歪める。
「さっきと帯の結びが変わっているな」
「え…あ…」
私は蜂須賀に教えてもらった結び方しか出来ない。今朝は清光がやってくれたから、今とは違うのだろう。
「少し歪んでいるが直そうか?」
困惑している私に優しく聞いてくれる。
「きちんと着付けていかないと五月蝿そうだろう?鶯丸は」
頷くと自分の部屋の障子を開けて中に入れてくれた。
浦島はいないようだ。
長曽祢は別に部屋があるからここにはいない。
私の締めた帯をほどき、一度きちんと着物を合わせ直してくれた。
それから器用に蜂須賀が帯を締めてくれる。
「女物はいいな。遊びがいがあって」
言いながら出来上がった私をくるりと回して確認すると、正面少し上から見下ろしてきた。
蜂須賀は背が高いから、嫌でも見上げてしまう私に、
「確かにそう見つめられると口づけてみたくもなる」
真顔でそう言うと蜂須賀の唇が触れた。
「…すまない、つい」
僅かな時間触れ合って離れた蜂須賀が謝罪してきたが、
「…構いませんよ」
言うと、
「三日月の言っていたことは本当だったんだな」
小さく溜め息をつき眉を寄せた。そして、
「これを持っていけ」
引き出しから何か紙の束を取り出して私に渡す。ひとつは自分の胸元にしまっていた。
「これは?」
「懐紙だ」
「懐紙…」
よく判らないが蜂須賀を真似て胸元にしまっておいた。
蜂須賀とふたり、離れの茶室に向かうと鶴丸は既に来ていて鶯丸と談笑していた。
「お待たせしました」
「いやいや、そんなには待っていないさ」
言いながら座るように促す。
大人しく従ったもののよく判らずにいると、
「俺を手本にすればいい」
蜂須賀に言われて素直に頷いた。助かった。
鶯丸の所作はとても美しい。
判らないまま従っていたのだが、和菓子を頂き、お抹茶を飲んで一息ついたタイミングで、
「眠…」
大きな欠伸をしてしまった私の手の甲を蜂須賀がつねった。
しかし、そのくらいで起きていられるはずもなく正座をしたまま目を閉じた。