第19章 Get your Dream
直して貰った礼を蜂須賀に伝え、長曽祢の元へ向かった。
そして、
「長曽祢さん今朝はすみませんでした。勝手に巻き込んで濡れ衣を着せてしまって…」
朝伝えられなかった言葉を並べると、
「いやいや、俺は大丈夫だから。むしろ関係ないのに選んで貰えて嬉しかったよ」
笑ってくれる。多分こういうところだ。選んだ理由。
優しさに目が潤みそうになった私に、慌てる長曽祢。
「贋作!泣かせているのか?」
「違う、俺は…」
「ごめんなさい。長曽祢さんのせいじゃないんです」
蜂須賀に向かって声を張った。
多分私の中で押し殺していた感情がそうさせているのだ。
「今夜お酌させてください」
「あぁ、楽しみにしてる」
笑ってくれた。
そのやりとりを見ていた鶴丸が、
「面白くないな」
呟くと、蜂須賀が、
「不愉快だ」
続ける。
「蜂須賀兄ちゃんたち焼きもちか?」
浦島が茶化すように言ったが、
「あぁそうだ」
やけに素直にふたりともが認めた。
それに対して長曽祢も私も苦笑いしか出来なかった。
畑での野菜の収穫を手伝って、屋敷に戻ると、鶯丸に声を掛けられた。
「慧、午後からは時間があるかい?」
「はい」
「ならば俺とお茶をしようか?」
茶道のレッスンのお誘いみたいだ。結構楽しみにしてた。
「はい!」
勢いよく返事をすると、
「では準備をしておこう」
離れの茶室へと歩いて行ってしまった。
「茶の湯か…俺も行くかな」
「蜂須賀行くのか?なら俺も」
蜂須賀と鶴丸も興味があるらしい。
なんだか賑やかになりそうだ。
畑当番の3人と、鶴丸と別れひとり寝室へと向かいドアを開けるとそこにはいつもと違う香り。
「香を焚いてみたぞ」
嬉しそうに三日月が言った。
「いい香りですね」
「あぁ。女がその気になる香りだそうだ」
さらりとそういうことを言う。どこまで本気なのか判らないのが怖い。
「その気になったか?」
ベッドに私を誘いながら言ってくるが、肯定することすらなんだか歯がゆくて、
「どうでしょう」
濁した私の手首を強く引き、組み敷いた。
真上から見つめてくる瞳に浮かぶ三日月。
「なってもらわぬと困るのだ」
「…どうして?」
「また、慧を苦しめてしまえば薬研にとられてしまうからな」