第19章 Get your Dream
その場にしゃがみ込んで、一粒落ちた涙を拭った。
そこへ、
「慧、見つけたぞ!」
鶴丸が私の側に駆け寄ってきてしゃがみ、肩を抱いた。
「急に広間からいなくなったから驚いたぜ。かくれんぼか?」
肩を抱いていた手を頭まで移動させて引き寄せる。
「…見つかっちゃった」
力なく返すと、
「ありがとな、髪飾り付けてくれて」
気づいた鶴丸が言った。
「ん」
「だがひとりで見に来るなんて頂けないな。俺を誘ってくれないと」
「鶴さんなら見つけてくれるでしょ?」
鶴丸の肩に頭を預けたまま言うと、
「当たり前だ」
掌に力が籠った。
「しかし、しゃがんでいたらせっかくの花が見えない」
そう言って私を立ち上がらせ、顔を見ないようになのか後ろから抱き締めてくれた。
「ひまわりは慧みたいだ」
「そう?」
「あぁ。いつも笑って堂々としてる。俺たちの太陽みたいな慧に似てる」
ぎゅっと抱き締める腕に力をこめた。
「…ひまわりのほうが、ずっと堂々としてる」
「それもそうか。慧はすぐ逃げちまうからなぁ。探しにいかなきゃならない」
鶴丸はそう言って笑った。
「すまんな、また困らせてしまったな」
「ううん、私こそごめん。みんなのこと大好きなのにあんなこと言って…」
「俺は少し驚きを減らそうかと思うが…」
「減らさなくていいよ。鶴さんじゃなくなっちゃう」
さっきの言葉を真に受けないで欲しい。
全て断るための口実だ。かぐや姫みたいだな、なんて思ったり。
「…そもそも神様とは結婚できないでしょ?」
左手の指輪に右手で触れながら言うと、
「夢をみるのは人間も神も平等だろう?」
鶴丸が言った。
「俺たちは慧を嫁に貰いたい。自分だけのものにしたい。そう思うのは自由ではないか?」
「そう、だね」
神も人間も平等か。不思議なことを言うものだ。
「それにしても薬研にはやられたな。まさかの横取りだ」
鶴丸の腕に手をかけたままひまわりを眺めていると言ってきた。
「慧は薬研に抱かれちまうのか?」
「まさか」
あれも多分薬研なりの優しさだったんだろう。
私的には想像できないが、もしも薬研に求められたら拒めないのだろうか?
確かにキスされたときには少し危なかったけど…。