第19章 Get your Dream
「長曽祢さんなの?他の男士って」
堀川が疑いの眼差しを向けたが、長曽祢は、
「さあな」
肯定も否定もせずそれだけ言って食器を下げに行ってしまった。
堀川は判らないと頭を抱えている。
「あー…何人いるのかも判らないしふたりしか知らない状態だと僕以外全員なのかもとか思えてくる」
堀川は反省したとは言ったものの興味だとか知りたい欲求がどうしても湧いてきてしまうのだろう。
「知らない方がいいこともあるんじゃないかな?」
食器を下げに行く途中のにっかりが声を掛けた。
「まさかにっかりさん?」
「ふふふ、どうだろうね」
怪しげに笑って去っていく。さっきからざわつくのは私の心ばかりだ。
なんだかまた居心地の悪さを感じて広間から逃げることにした。
途中思い立って寝室に戻って鶴丸にもらった髪留めをつけた。
そして、ひとり庭に出て大倶利伽羅に教えてもらったひまわり畑を目指した。
心が落ち着ける場所を探した結果、といったところだろうか。
黙々と歩いてたどり着いたそこはやはり満開のひまわりが私を出迎えてくれて、胸があったかくなった。
朝の眩しい太陽に照らされて前に見たときとは違う輝き。
屋敷から見えないように畑をぐるっと回り込んで大きな花に身を隠した。
やっぱりみんなにバラしたのよくないんじゃないのかな?
昨日の大般若の話から推測すれば打刀以上は、清光以外に鶴丸と大般若、というのは知っているのだろう。
光忠は多分一部。
堀川のような疑念を抱くものがいれば長曽祢のように濡れ衣を着せられるものもいるだろうが、大丈夫だろうか。
長曽祢には本当に申し訳ないことをした。今夜はお酌させてもらおう。
薬研のあの発言も正直苦しかった。
やめちまえ。
そうだよね。それがいちばん幸せなのかもしれない。
ここに留まるのは私のエゴだ。
何か他に方法ないのかな…。
私はみんなに喧嘩して欲しいわけじゃないし犯人探しして欲しいわけじゃない。
でもまぁ期間限定だ。
夏が終わる頃にはいつも通りのパートタイマー審神者に戻るだろう。
このひまわりが枯れていくのに合わせるように。
今、愛されてるこの日常もプツリと途切れて、なんだかぎこちなくなってしまうのだろうか?
それを考えてしまうと少し胸が苦しくなって目頭が熱くなってしまった。
じわりと涙が溜まっていく。