第19章 Get your Dream
小狐丸と朝を迎えて、なんとなく痛む腰を宥めながら寝室に置いておいた洋服を着て、掃除を始めると、寝ぼけ眼の小狐丸がぼんやりと眺めてきながら、
「慧さんは早起きですね」
なんて言ってくる。
「んー?まぁ天気いいし非番だし、やれることやらなきゃもったいない」
「もう少し小狐の腕の中にいればよろしいのに…」
ぼやきながら私の傍までやってきて抱き締めた。
「もっと私を構ってください」
甘えてくる小狐丸が可愛くて、手を止め顔を上げる。
目を閉じると小狐丸の唇が触れた。
しばらく小狐丸の口づけに身を任せて、唇が離れたあとまた掃除を始めると、
「あぁもう。慧さんと祝言を挙げたい」
ぼそりと言う。
「私も結婚するなら小狐丸かな…」
ぼそっと返すと案外しっかり聞こえてしまっていたらしく、再び抱きついてきた。
「慧さん、もう一度よろしいですか?」
言いながら私の服に手を掛け脱がそうとしてくる。
「ちょっと!!」
「そのようなことを言われて興奮しないとでも?」
必死の小狐丸からこちらも必死で逃げようとしていると、
「慧ちゃーん、着物持ってきたよっ…て、何してんの!?小狐丸」
私を脱がそうとしている小狐丸に勢いよく清光が掴みかかった。
「加州殿、これより私と慧さんは夫婦の契りを交わすのです」
「意味が判んないから!!」
私から小狐丸を引き剥がして言った。
「…小狐丸、さっきのは一旦保留で」
言うとまたしゅんと下がる髪。
「婚約破棄ですか」
「そもそも婚約もしてません!」
小狐丸と結婚したら愛してはくれそうだけど常識的な部分で苦労しそうだ。
「何なのいったい」
小狐丸に脱がされかけた服を今度は清光が脱がせ、持ってきた襦袢を着せる。
「私が祝言を挙げたいと申し上げましたら、慧さんも結婚するなら小狐丸とおっしゃってくださったので」
「はぁ?嘘でしょ?こんな狐と結婚したら苦労するよ?」
清光が考え直せと言わんばかりに紐をきつく締めた。
「うん。だから保留にしたの」
「だよねー。俺の方が幸せにできるよ?」
「…それも、ね」
清光は少し束縛が激しそうだからまた大変そうだ。
「なんで?絶対俺だってば!」
「いいえ、小狐です」
ふたりの言い合いは止まらない。