第18章 Show Me The World
「わかり、ました」
物吉が顔を上げた。その目にはうっすら涙が浮かんでいる。
「なにかあったらボクにぶつけてください。ボクも慧ちゃんが好きだから、力になりたい。お返ししたい!」
はっきりと言ってくれた。
「良かったな慧。物吉もお前の味方だ。もちろん俺も。ツラいことがあったら俺にもぶつけてくれて構わない」
山姥切も言ってくれる。
どうしてみんなこんなに優しいのだろう。
嬉しくて涙が溢れてしまった私の頬に物吉の唇が触れる。
「脇差は別に奥手でも純粋でもありませんよ。むしろそういったことには詳しい方ですから、心配はご無用です」
そう言ってくれた。
「慧ちゃんご飯食べられる?」
食事の準備が整い賑やかになってきた広間で光忠がわざとらしく聞いてきたが、
「食べられます。てか私のパフェ食べたの誰よ?私ほとんど食べてないんだからね!!?」
鬱憤を晴らしてやるとばかりに言うと、
「だって美味しそうだったんですもん」
堀川が口を尖らせた。
「もー…いい。今度ひとりで行って食べるから!」
「えぇ!?そんなこと言わないで!!」
「やだ。許さない」
光忠と堀川にべぇっと舌を出してやると、
「ひとりでなんて行かせませんよ?そのときはぜひこの狐にお声掛けください。お供しますゆえ」
後ろから小狐丸に抱きつかれた。そして、
「さぁ慧さん、夕食は私と摂りましょう」
私を抱き上げて自分の席の近くまで連れていく。
「ちょっと!小狐丸さん!?」
「あなたたちと居ると慧さんの気が乱れます。これ以上は容認できませんね」
咎めた堀川たちを切れ長の目を光らせて一蹴した。
「あの方たちと甘味処へ行ったのですか?」
「うん」
小狐丸のとなりで箸を手にとった。
「なぜ私には内密に?」
「別に内緒で行った訳じゃなくて清光と行くつもりだったのについてきちゃったの」
言いながらおかずをつまむと、物欲しそうな目で見つめてくる。
そっとそのおかずを小狐丸に差し出すと嬉しそうに口を開けて食べた。
「私も慧さんと行きたかった」
言いながらまた口を開ける小狐丸。
そうして私のおかずを食べきった小狐丸は、
「今度は私が食べさせて差し上げましょう」
私に箸でつまんだおかずを差し出してきた。