第18章 Show Me The World
「許して、くれませんか?」
自分の発言、行動なんかを反省しての言葉だろう。
「許すもなにも、堀川くんは悪いことひとつもしてないじゃない」
「だけど!慧さん傷つけた…」
「傷ついてない」
言いきると不安そうに顔を上げる。
「ねぇ大般若さん、もしも今私が怒ってたり傷ついてたりしてたらどうなる?」
振り返らずに聞くと、
「そうだなぁ、本丸の気が乱れてちょーっとおかしくなっちまうかな」
「なってる?」
「いや」
私の気持ちを汲んでくれたのだろう。即答してくれた。
「だから大丈夫」
口角を上げると、堀川はほっとしたように強張った表情を緩めた。
多分ほんとはまだ乱れてるんだろうけど、そのことが判るのは今大般若だけだ。
「さぁさ、お互い仲直りしたんなら食事にしようじゃないか。慧さん、これ運んでくれるかい?」
「はい」
歌仙に促されて私は出来上がった食事を広間へと運んだ。
一緒にいた物吉も全てを聞いてしまったのだろう。
もう脇差も同じ。短刀くんたちに知られるのも時間の問題かもしれない。
私のすぐ後ろをついてきていたらしい物吉が食器を置いた私を抱き締めてきた。
そして、
「ツラかったんですよね。ボクたちのために毎日。ボクは慧ちゃんがいつも笑ってくれてるから全く気づかなかった。ごめんなさい」
「物吉くん…?」
「笑ってなきゃいけなかったんですよね?ほんとは苦しいのに」
ずいぶんと重く受け取ってくれているようだ。
「大丈夫だよ、物吉くん。ありがと。清光も光忠も優しいから、ね?」
「だけど…前に厨で泣いていたときもそうだったんですよね?ほんとは嫌なのに無理矢理」
厨で泣いてた…あぁ、石切丸のときと三日月のときかな?
「物吉、慧を困らせてやるな」
あまりに戻ってこない私たちに気づいたのか山姥切が声を掛けてきた。
「慧は物吉が思うよりもずっと強い。どれだけ泣いてもきちんと自分で納得するまで考えて答えを出してる。それで今この結果を迎えているとしても慧が決めたことだ。慧は俺たちと過ごしこの本丸を強くする方を選んでくれたんだ。だから今度は物吉が受け止めてやるべき番だろう?」
物凄くしっくりくる物言い。山姥切も沢山のことを知っているのだろう。