第1章 プロローグ
まぁ早い話が神の前では現代の法律も貞操観念も常識も善悪も全て無意味だということか。
「よかったな大将、不倫にならずに。これで鶴丸と心置きなくそういう関係になれるぜ?」
眼鏡の奥の目が怪しく光る。
「ちょ、薬研くん!?」
「なっ…ならないから!ないから!ばかっ」
もーやだ。あんなショートパンツ穿いて太もも全開小学生みたいな格好なのに言ってることがとんでもないエロ発言だなんて。
グラスの緑茶をぐっと飲み干して、近くにあった手拭いを薬研に向けて投げつけてやった。
「まぁ心配しなくても、俺たちが大将を求め始めちまったらもう間違いなく大将の身体疼いてしょうがなくなると思うぜ?」
「うぅ~~」
実際先程鶴丸のキスで疼いてましたなんて言えず、真っ赤になって下唇を噛んだ。
「もう、薬研くん主いじめるのやめたげてよ」
光忠が助け船を出してくれる。
あーもう、今日は何かがおかしい。
またしても頭がパンパンになりかけているところに、
「主、助けて!!!」
襖を勢いよく開けて清光と堀川が飛び込んできた。
「え??」
私を盾にするように背中側に回り込み隠れようとする。
私を含め審神者部屋にいたメンバーは状況が理解できない。
そこへキラリと何かが光ったかと思えば首元に鋒が突きつけられていた。
は、刃物!!!?
「首落ちて…って主??」
驚きと恐怖で見開いた私の目からは大粒の涙が溢れ落ちる。
「ぁ、ゎ…」
パニックに陥りガタガタと震え出す私を慌てて隣にいた鶴丸が抱き締め、
「どした?大丈夫か?」
「ごっっ、ごめん主」
突き付けていた刀を鞘に収め安定が謝った。
私の後ろに隠れていた清光と堀川も何事かと慌て始める。
「こっっっゎ、い、ょ…刃、物…」
目を閉じることも溢れる涙を止めることも出来ない私を鶴丸は自分の胸に押し付けた。
「大丈夫だ。もう刃物は見えない。平気だから落ち着け」
震える身体も落ち着かせるようにきつく抱き締める。
「一体何があったの?」
光忠が清光たちに訊ねる声が聞こえる。
「いや、あの、さっきみんなで主と風呂入ったのが安定にバレて…」
「バレちゃだめなの?」
特に問題ないのでは?と光忠が疑問符を浮かべる。
「はぁ!?燭台切、大将と風呂入ったのかよ!?」
今度は薬研が声を荒らげた。