第18章 Show Me The World
「大般若さん、私帰りたい」
「どうした?俺は慧がそう望むのなら途中でやめて帰っても構わないとは思っているが、力になれることはあるかもしれない。理由を聞かせちゃくれないか?」
大般若の胸にしがみついたまま唐突に言った私に大般若はそう答えてくれた。
「…みんな知ってるって」
「何が?」
「清光以外ともそうだってこと…」
言うと、
「そうだな。聞いちまったか」
まだ涙が収まらない。
「死にたい」
「そんな言葉を口にするな」
「だって恥ずかしすぎる。バカみたいじゃない、私。節操ないくせにそれを棚に上げてへらへらと…もうツラい…っっ!?」
溢れ出てくる言葉を大般若が塞いで止めた。
「んっ…」
抵抗しようと大般若の胸に手を当てて突っ張るも、敵うはずもなく深く口づけられる。
口内を荒らされて舌を絡められて、口の端からどちらのものかも判らない唾液が流れて落ちた。
頭が働かなくなってくる。考えることを拒む。
大般若の口づけに呑まれそうになった頃漸く唇が離れた。
溢れた唾液を親指でぐっと拭って、もう一度触れるだけのキス。
ぼんやりした目を向ける私に、
「三日月サンたちが慧を守るために出した決断だ。ただでさえあんたの審神者力は強い。こっちに戻ってきてからは特にな。知らず知らず男士の気持ちを昂らせるよりは、何人かいると伝えておいた方が抑制できるだろう?」
判らない。言っている意味が理解できない。
「加州だけだと思っていればあいつが出陣してるときなんかは手薄だと勘違いする輩もいるかもしれないだろう?だが誰とは知らなくても何人かいてどこかで見張ってるってなりゃあ手もだせないし、俺のように慧の気のブレが判るやつもいるという圧もかけておける」
ぼんやりする私の目を大般若の目が捕らえた。
「それになぁ、あんたにゃ申し訳ないんだが何人かいるってこたぁいつか自分も、と思えるだろう?それが士気を上げることに繋がる。それに同衾に関してはあんたの生きる世界とこことじゃ考え方が違う。ここではあんたが何人と、誰とそうなっても誰も咎めやしないんだよ」
頭が追い付かない。
「あんたは自分が節操なしだと思っているだろうが、多くの男士と関係を持つほどに安定するし、強さが増す。理解し難いだろうがな」
大般若の声は落ち着いていて優しい。