第18章 Show Me The World
「そうだな。先日一部の短刀と脇差抜きで話があったからな。どうせ三条あたりが牛耳ってるんだろうとは思っていたが」
「これも慧さんを守るために、と三日月さんが決めて伝えてくれたんだと思うよ?」
山姥切と歌仙は肯定的だった。
「なんで!?どうして脇差は仲間外れなの?」
「そういうところだ。お前らは慧の感情よりもまだ自分の感情の方が勝ってしまうだろう?三日月たちから見れば幼く思えたのではないか?実際兄弟は節操がないしな」
「安定さんは知ってるっていうの!?」
「知っている」
完全に乱れまくっている感情の堀川に対し山姥切は落ち着いている。
「…いつから、ですか?」
堀川だけじゃない。私だってパニックだ。
「俺が近侍で、あんたが鶴丸に連れ回されてた日だ」
山姥切と仕事をし、鶴丸にまた寝室に連れて行かれたときだろうか?
2日くらい前、ということになる。
「慧さんがそんな風に悩んでしまったら気が乱れるのでは?」
歌仙が私に向かって言ったが、みんなが知ってるなんて知らずにへらへらと生活をし、浮かれてたなんて恥ずかしい。
「…ごめん。私ちょっと」
目頭が熱くなって、この場にいることすらツラくて厨から逃げた。
廊下を進む度に涙が一粒ずつ頬を伝う。
だからあの日大倶利伽羅はひまわりの前であんなだったんだ。
みんな知ってるのに万屋までついてきてくれて途中いろいろ買ってくれたんだ。
感情が乱れるのはよくない。そんなこと私だってもう知ってる。
だけど私の心は不安定だ。審神者として足りないものばかり。
強くなりたいと願う度に乱される。弱い自分、ズルい自分、汚い自分を思い知らされる。
帰りたい。だけど帰ってしまえばまた同じことの繰り返しだ。
涙を拭おうとした手には指輪が嵌まってて、逃げることは許さないと言っているようだった。
「慧どうした?」
ぼたぼたと涙を流しながら歩いている私に声を掛けてきたのは、
「大般若さん…」
「なんか嫌なことでもあったか?」
私に近づいて涙を隠すように抱き締めてくれた。
「俺の部屋、くるか?」
自分の部屋に戻ったところでだ。
他の選択肢もなく、頷くとそのまま大般若の部屋に連れ込まれた。
「まずは落ち着こう」
私を抱きすくめたまま座り、背中を擦ってくれた。