第18章 Show Me The World
「じゃあボクが先に慧ちゃんとチューしてもいい?」
乱がぴょこんと私の前にしゃがみこんで顔を近づけてきて、
「…」
気づけば乱の柔らかい唇が触れて離れていった。
「おい乱!!」
「厚は奥手すぎるんだよ。そんなんじゃあの大きい刀のみんなどころかいち兄にすら先越されちゃうよ?」
なんて言った。すると、
「お前らが見てないときじゃないとイヤだ」
厚がそう言い放つ。
「だいたい見せるもんじゃないだろ?キスとか!!」
厚はそう言っているが、
「俺もしたいときにしたらいいと思うよ」
今度は蛍丸の唇が触れた。
目が合うと少しいたずらな表情をする蛍丸。そして、
「慧からしてあげたら?」
「…なんで」
三日月にキスとハグは拒むなとは言われたが、自分は受け身のつもりでいたからそう返すと、
「あーもう判ったよ!」
厚が私の頬を掌で掴み自分の方に向かせて口づけてきた。
触れ合うだけのキス。
乱たちよりは少し長いキスが終わると、厚はあり得ないくらい真っ赤に顔を染めていた。
「大丈夫?」
「っ、ガキ扱いすんな!」
ぶっきらぼうに言い放ってそっぽを向いてしまった。
どうしよう。困惑していると、
「気にすんな。厚はなんだかんだ喜んでるから」
薬研が言った。
「くっそ柔らけぇ。なんなんだ慧はどこもかしこも…」
ぶつぶつと何か言っている。
「な?」
確かに薬研の言うとおり大丈夫そうだ。
そういえばだいぶ陽が高くなってきた。
そろそろ屋敷に戻らないといけない時間かもしれない。
「厚ごめん、私ちょっと仕事があるから先に帰るね。楽しかったよ、ありがと。また後でね」
そう伝えてひとり屋敷へと戻った。
なんだかとんでもなく純粋な時間を過ごしてしまった。
初めて清光にキスされた日のことを思い出してしまうくらい。
最近はすっかり快楽に溺れさせられる日ばかりだったから、こんなトキメキが少し嬉しくて歩きながらひとりにやけてしまった。
「何かいいことがあったのかい?」
そんな私を見つけたにっかりが声を掛けてきた。
「ん、ちょっとね」
「危険なことはなかったようだね」
多分私の出している気を感じてそう言っているのだろう。
「申し訳ないけどその純粋な気を乱させてもらうよ」
そう言って手を取った。