第17章 Signalize
「ごめん、つい楽しくなっちゃって…」
「なんでそんなに荷物持ってるの!?」
私の手に卵以外の物を見つけて咎める。
「これは俺たちから慧への愛だ」
三日月が言い、
「何それ?普通に買い物してきたの?僕も料理さぼって行けばよかった」
堀川はなんだか悔しそうに言った。
「卵買えた?」
卵を厨に運ぶと光忠が聞いてくるが、すぐさま着けていた髪留めと指輪に気付き、
「どうしたの?これ…」
私の左手を取る。
「あ…買って、もらった」
「誰に?」
「…石切さん。髪留めは小狐丸に」
嘘も誤魔化しも出来ないししないけど。
「明日は俺の帯を締めてもらうぞ」
残りの卵を持ってきてくれた三日月が言った。
「あー、行かすんじゃなかった。無理してでも僕が行くべきだったよ」
光忠も悔しそうだ。
「はっはっ。次はお主らが慧と行けばよい」
三日月は飄々と去っていく。
「ついてったみんなに買ってもらったの?」
「…ぅん」
「もー。指輪は僕が買ってあげたかったのにな」
珍しく光忠の愚痴が止まらない。
「そんな。石切さんは私が既婚者なのに指輪嵌めてないのを気にしてくれただけだと思うし」
「だからだよ。その指に嵌めるってことはそういうことなんでしょ?」
なんだか腹が立つ、と光忠は指輪をするりと抜き取ると右手の薬指に嵌めかえた。
「じゃあご飯食べようか」
ひきつった笑みで私を皆が食事している広間へと引っ張って行った。
広間で食事をしているのは万屋に行ったメンバーだけで、他の男士たちはもうすっかり食べ終わってしまっているらしい。
陸奥守と長曽祢たちは既に呑み始めている。
「光忠ごめん」
せっかく温かい食事を用意してくれていただろうに。
光忠と一緒に食事を摂りながら言うと、
「今夜啼かせてあげるから」
耳元で言われぞくりと芯がうずいた。
「全部外して産まれたまんまの慧ちゃんを愛してあげる」
言いながら髪留めを撫でる。
光忠と食事をしながら真っ赤になっていると、
「燭台切、慧に何を言ったらそうなるんだ!?」
気づいたらしい長谷部が咎めてきた。
「長谷部くんには一生かかっても言えそうもないことだよ」
光忠はまだ機嫌が悪いのが長谷部を皮肉って会話を終了させた。