第17章 Signalize
「あのー、万屋に行きたいんだけど誰か案内してくれるひとー」
指名することが出来ずに広間の入り口で声を出すと、
「え!?僕行けるよ!」
安定が手を上げた。
「俺も行けます」
続いて長谷部も名乗り出てくれる。
ふたり連れて行けば十分だろうとお願いし、審神者部屋に財布を取りに行って、私は正面玄関から出られないし裏口からの方が近いと教えられそちらに向かうと安定と長谷部の他に10人くらい集まっている。
「多くない?」
聞いた私に、
「護りは多いに越したことはありませんから」
「俺と行くって約束したじゃん」
一期と清光が言う。
「慧手を繋がぬか?」
言うが早いか三日月が私の手を取り、
「もうじぃさんの介護じゃねぇか」
和泉守が笑った。
「卵買いに行くだけなんだけどな…」
ぼそりと呟きながらもぞろぞろと陽が傾きかけた道を歩いた。
本丸から出るのが初めてだった私には見るもの全てが新鮮で、景色に驚き町並みに驚いた。
「なぁ、どれか欲しくないか?」
鶴丸が途中の店で髪留めを吟味している。
「え、と…」
ここは欲しいっていうのが正しいのかな。
「俺が買ってやりたいんだ」
「じゃあ…これが好き」
今日見たひまわりのような花のついた髪留めを指差すと、
「驚いた!やっぱりひまわりが好きなのか」
目を見開いて言う。
「実は今日伽羅さんに見せてもらったの」
正直に言うと、
「そうか!どうだった?」
「すごくキレイだった!鶴さんとも行きたい」
「あぁ、行こう。その時はこれをつけてくれ」
そう言って鶴丸はその髪留めをプレゼントしてくれた。
卵を買いに来ただけのはずなのに、長谷部と小狐丸も髪留めを選び、蜂須賀と一期は帯留めを、安定は巾着、清光と和泉守はピアス、大倶利伽羅は草履、大般若は簪、石切丸は指輪とみんなが何かを私に買ってくれた。
「卵買いに来ただけなのに…」
「みんなお主に何か身につけて欲しいのだ。素直に受けとればいい」
そう言う三日月からは帯だ。
「うん、ありがとう。大事にします」
お礼を言うとみんな嬉しそうに頷いてくれた。
いちばんの目的の卵と、みんなに買ってもらった物を持って本丸まで帰ると、
「遅いよ!なんで卵買いに行っただけなのに。ご飯冷めちゃうし!!」
堀川が仁王立ちで待っていた。