第17章 Signalize
夕食前、明日から出陣はなし、となったことは早々に陸奥守が男士に伝えていたらしく、喜ぶ者もいれば落胆する者もいた。
「ねぇ包丁ちゃん、またみんなでお料理しよっか」
声を掛けると、
「する!お菓子か?」
「お菓子でいーよ。プリン好き?」
「好き!」
包丁に提案していると案の定ほかの短刀くんたちも寄ってきた。
「ぼくもやります!」
「オレも!」
とりあえず短刀くんの囲い込みには成功したようだ。
「じゃあプリン作りは決定ね」
「あとよ、慧。明日小川に遊びに行かねぇか?」
厚が言ってきた。
「慧と行きたいんだ」
「うん、いいよ」
快諾すると、
「よかったな厚。慧とデートじゃねぇか」
愛染が茶化してきた。
「え!?ふたりで?」
「…ダメか?」
「ダメじゃないけど…」
まさかの清光たちを差し置いて厚とデートすることになろうとは。
「じゃあ俺たちはそんなふたりを観察といきますかっと」
蛍丸の発言に周りの短刀くんたちが両手を上げて喜んだ。
蛍丸しれっと短刀くんに混じってるし。
「なんだよ…」
つまらなさそうな厚に、
「慧と手を繋ぐ権利はやるからさぁ」
愛染が言い放った。
なんなんだ、この厚の恋を応援プロジェクトみたいなのは。
申し訳ないけど完全に息子たちと遊ぶ気分だった私に、
「じゃあ明日、部屋に迎えに行くから」
厚が真剣に言った。
なんか純粋すぎる想いが伝染してしまって鼓動が早くなる。
「プリン作ったら、部屋で待ってる」
なんかもう違う意味で心臓が持たない。
純粋にときめいてしまっている私に気づいたのか、にっかりが、
「気を付けなよ?彼らは前科があるんだからね」
釘を刺してくる。
「なっ、もうしねぇよ!!」
厚が反論した。
とりあえず明日はプリンと小川だな。
材料の確認をしに厨に行くと、いつものごとく光忠たちが忙しくしていた。
「ねぇ光忠、明日短刀くんたちとプリン作ろうと思ってるんだけど、卵と牛乳ある?」
「んー、待ってね」
料理の手を止めて確認してくれる。
「あー…牛乳はあるけど卵が…」
「そか。じゃあちょっと買ってくるよ」
「え?万屋行くの?行ける?」
そうだ。私まだ行ったことなかったや。
「僕は料理しなきゃだから…誰か誘ってみて」