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夢より素敵な 3.5次元

第17章 Signalize


「伽羅、さん?」

離れたタイミングで問うと、

「口づけは許してほしい」

そう言ってまた口づけられた。

いつも馴れ合うつもりはないと言っているその唇は柔らかくて優しくて温かくて。

繋いだ手をほどき、腰に回される。

私はどうすべきだろう?

少し悩んで行き場のなくなってしまった手をそのまま大倶利伽羅の背中に回した。

ひまわりの前で大倶利伽羅が飽きるまでキスが続いた。

だけど、それだけ。それ以上は絶対にしないと決めているのだろう。

唇が離れ、少し潤んだ目で見つめると、

「…煽らないでくれ」

困ったように眉を寄せた。

「ぁ…ごめん、なさい」

私には制御できない感情。

もしも大倶利伽羅がその気になってしまえば多分落ちる。

離れようとした私を今度は後ろから抱き締めてきた。

「ひまわりでも見て落ち着け」

「ぅん」

昂った気持ちを必死で宥める。

まさか大倶利伽羅にキスされるとは思ってはいなかった。

不覚にもドキドキしてしまった。

私が帰ってきてからやけにデレてはいたけども、ここまでとは。

困惑している私に、

「自分の気持ちに気付いて伝えてからは、あんたに笑って欲しいほうが勝つ」

そう教えてくれた。

「…迷惑か?」

「迷惑じゃない、よ」

ひょっとしたら嫌われてるのかも、なんてずっと思ってたから、今すごく嬉しい。

これ以上のことに応えることはできないけど。

「女は柔らかいな。それにあんたは小さい」

「…」

「国永が言っていた意味が今なら判る」

そう言って少し腕に力を込めた。

大倶利伽羅の腕に指をかけたまま、その温もりを感じていると、首の後ろに口づけられた。

「ひゃっっ!!」

「そんなに首を見せてたらそうして欲しいのかと思うだろう」

首をすくめてちらりと振り返ると、大倶利伽羅の目はとても優しかった。

それからしばらくひまわりをふたりで眺め、ぽつりぽつりと会話を交わしたあと、また手を繋いでのんびり屋敷まで戻ると、

「慧さん、どちらへ?」

審神者部屋の前の縁側に一期が立っている。

「散歩…」

答えると、

「大倶利伽羅殿と手を繋いでですか?」

困ったように言う。わざとだ、絶対。

「ごめんなさい」

「いいんですよ。貴女が楽しかったのであれば。私はいい身分だなんて思いませんから」
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