第17章 Signalize
その日の天気はとても穏やかだった。
近侍には陸奥守がついている。
「えー天気じゃのう。慧は晴れ女かにゃ?」
出陣を見送り、まだ少しだるい身体を縁側に座って宥めていると、カステラとお茶を持って現れた。
「あ、仕事…」
立ち上がろうとした私に、
「えぇきにえぇきに。出陣計画なんかはわしがやっちょいちゃる。慧はそこで休んじょったらえぇ」
私の側にお茶を置いてそう言った。
審神者部屋から出陣計画の紙を持ってくると、縁側に寝そべってそれを眺めている。そして、
「加州とはうまくいっちょるんか?」
突然聞いてきた。
「…ん」
「ほーか。そりゃ良かった。あいつは真っ直ぐな男じゃき、たまに扱い難いじゃろうがの」
男士の名前を書き込みながら言った。
「加州はまた強くなりよるのう。前みたいに休ませたらどうかにゃ?」
「そうだね。てか最近みんな強いんだよね。三日月さんたちに岩融と今剣のサポート頼んだら案の定既にいいレベルになってるし」
「全体的に夏休みにするか?」
「資材もお金もあるしノルマも達成してるし。内番ばっかりの日があってもいいのかも」
陸奥守の持ってきてくれたお茶はとてもよく冷えていて、美味しかった。
「じゃぁ、明日からしばらくはそうせよう。また短刀らぁを集めて料理教室なんかしたらええが」
出陣なしっと、書いた名前にびーっと線を引いて消した。
「ほんで畑仕事して汗をかいたらわしと風呂に入る、と」
「書いたの?」
「いんにゃ書いちょらん」
そんな報告書を上げてしまえばなんと思われるか想像もつかない。
焦る私を陸奥守はにぃっと笑った。
「やったら今日は帰ってくるまですることないのぅ。わしはちっくと昼寝でもするがおんしはどうする?」
「私はちょっと散歩でもしてきます」
「おー。また後での」
陸奥守は起き上がり私に書類を託して去って行った。
出陣休んでもこれだけ戦果を上げてれば文句はないだろう。
みんなと何して遊ぼうかなぁ。
スイカとか出来てた気がするからみんなで食べたいなぁ。
朝のぼんやりがまだ収まってなくて、そのまま縁側で横になった。
暑いけど心地よい。景色もいいし。
「あんた、こんなところで寝転んで暇なのか?」
見上げると庭に大倶利伽羅が立っていた。
「そう。暇なの」
「そうか」