第17章 Signalize
「慧ちゃん」
清光の指が私の指に触れて絡まった。
「ごめんね、俺のせいで」
その言葉の直後、頬に冷たい感触。
一点から下りていくような。
清光の涙?
何度かその感触を感じ、私の指に漸く力がはいった。
そのはずみで身体中が動かせるようになり、最後に目が開いた。
「慧ちゃん!!」
「目覚めたか?」
「…おはよう、ございます」
身体を起こした私に清光は抱きつき、三日月たちは安堵の表情。
「何があった?」
「…先程皆さんが話していた通りでほぼ間違いないと思います」
「やはり初めの言霊が勝ったのだろうな」
三日月が言った。
「昨日は鶴丸によって引き起こされた症状が影響しておるのだろう。加州以外がそうさせてしまうことには少し危険が伴うようだな」
「そうだね。今回は無事に戻れたけど、いつもそう上手くいくわけじゃないだろうし」
やはりこのひとたちは私を叱らない。
「慧さん、ご無事で良かった。小狐は心配で心配で」
小狐丸が眉を寄せて見つめてくる。
「狐にも慧さんを救えるような力があればいいのですが…」
「あるよ。小狐丸の優しさと強さにいつも救われてる」
ふわふわの髪に手を伸ばして触れると、私から清光が離れた隙をついて小狐丸が私を抱きすくめた。
「あぁっ、小狐は貴女の元に来れて幸せです」
「狐」
三日月の声がそれを咎める。
「嫌です。今は三日月殿の声は私には聞こえません」
「だがな、慧の頭痛を治してやらんと。見えておらんだろうが痛みで顔が歪んでおるぞ」
必死で耐えて小狐丸のハグを受け止めていたのはやはり三日月にはバレていたようだ。
「慧さん!!すみませんっっ」
慌てて私から離れて三日月に差し出した。
「三日月さん、お願い、します」
耐えきれない私に、三日月はそっと口づけてくれた。
今日のはかなり酷い。なかなか引かない。
「長くない?」
清光が不満そうな声を上げたが、三日月の口づけは終わらない。
「っ、は…ぁ」
口づけが終わり頭の痛みが引いた私に、今度は奪いとるように清光が口づけてきた。
「加州?」
「なんかムカついたから」
そう言ってまた布団の中に潜り込もうとしている。
「いい加減起きようか。慧さんも仕事があるんだから」