第17章 Signalize
朝、なんだと思う。
だけど私の身体はまた金縛りにあったように動かないのだ。
もちろん目も開かない。
周りが騒がしい。
真っ先に布団を掛けられた感覚はあった。
そして聞こえてくる声。
「慧さん、加州さん、聞こえているかい?」
「どうしたものか、ふたりとも起きぬとは…」
「昨夜急に気の流れが変わりましたが、それが関係しているのでしょうか?」
三条派の3人の声がする。
「昨日慧はあの状態になってはいたから、加州によく言っておいたのだがな」
「だけど、加州さんも慧さんには相当ご執心だよ?以前の大般若さんとのことを考慮すればまた帰したくないと願ったのが自然ではないかい?」
「ですが、今回は加州殿も目覚めない」
「とすれば慧の方もそれに応えたか」
ーーねぇ清光、聞こえてる?
ーーうん。なんかみんな慌ててるね。
ーー身体動かなくなっちゃったね。
ーーそ、だね。どうしよっか。
意識の中で不思議だけど清光と繋がっていたからあまり怖くはなかった。
それでも少なからず私の出した言霊が原因だ。
ーーこのまま死んじゃうのかな?
ーーまさか。そんなことあの天下五剣がさせないし、俺もさせないよ。
ーーだけど…。
少し不安になってきてしまった。
ーー多分ね、慧ちゃんのなかで10年後って約束したのに、俺のせいで意識がそれを上書きしようとしてるからなんだと思う。
ーーやっぱり10年後だよって思いこんでみるね。
昨夜は自分の気持ち素直になりすぎていた。
だから自分のことしか考えていなかった。
私がここに身を捧げていいのは10年後。子どもたちがふたりとも成人してからだよ。
それまではみんなを待たせて、あっちとこっちを行ったり来たりしなきゃなんないの。
頑張ろう?ふんばろう?
大丈夫。みんなが愛してくれるから。
昨日のは取り消す。
必死で意識下に訴えた。
すると、
「っ!!」
隣で清光が起き上がった。
「加州さん!?」
「戻れた…慧ちゃんは?」
「まだだ」
良かった。とりあえず清光は無事みたい。
ならもう少し私の意識と話してみよう。
私がここに身を捧げるのは10年後。
今は、できないの。
だけど、みんなを好きな気持ちは嘘じゃないよ。大好きで大切。