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夢より素敵な 3.5次元

第15章 kiss for all the world


とりあえず鶴丸との記憶、というものを取り戻すためだと、一緒に畑にいかされた。

「鶴丸さん、よろしくお願いします」

「あぁ…」

暑い陽射しの下淡々とトマト、きゅうり、そして枝豆を見つけて収穫する私をずっと見つめている鶴丸。

「鶴丸さんはお酒呑めますか?」

「あぁ、好きだが」

「私も好きなんです。今日は枝豆を茹でておつまみにしてみましょう」

「そうだな」

鶴丸の声には覇気がない。

だけど私にはどうしようもできない。

「きゅうりは光忠に漬物にしてもらおっと」

ぱちんとハサミで切ってもいでいると、

「慧」

鶴丸の腕が後ろから私に巻きついてきた。

「ちょっとどうしたんですか?急に…」

「俺が酷いことしたから…すまない」

「酷いこと?判らないですが…」

持っていた籠を地面に落としてしまうほどにきつく抱き締められる。

そして、身体の向きを変えられ、深く口づけられた。

「んっっ!!!?」

驚いたのはもちろんだが、それよりも強い恐怖がこみ上げてきて、鶴丸の胸を叩いた。

それでも離してくれなくて、目を見開き涙を流しながら身体を捩る私に、

「…泣いてくれるな」

「やっ…こゎ、い」

唇を離して私を強く抱き締めてくれるけど、

「ごめ、なさっっ。私、鶴丸さんが、怖い」

必死で離してくれと訴えた。

そのうちに頭がガンガンと痛み始めて唸るように身体を強張らせていると、

「どうした?大丈夫か?」

「頭がっ…」

あの頭痛に似ているような、それとも記憶を思い出すのを拒むようなそんな頭痛。

「ごめんなさい、ごめん、なさい」

ぼろぼろと涙を溢しながら謝る私に、

「謝らなくていい」

そう言って抱き上げ、屋敷の方へと戻ってくれる。

横抱きに抱かれ鶴丸にしがみついて体温を感じていると、不思議な温かさが流れ込んでくる気がした。

なんだか懐かしい。

私が痛みと悲しみで苦しんでいるときにいつも傍に居てくれたようなそんな感覚。

「鶴、さ…」

「なんだ?」

「ありがと」

ぼそりと言った私に、

「今、鶴さんって…」

鶴丸の戸惑った声が聞こえた気がしたが、あまりの頭痛で意識を失ってしまったようだった。

それ以上のことは覚えていない。
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