第15章 kiss for all the world
「私いつかかめきち触ってみたいんだよね。かわいい」
「昨日触ってたよね?」
「触ってないよー。かめきちはいつも浦島くんといるし、手が出せないって」
ふふっと笑うと、清光と安定が顔を歪めた。
「慧さん、食事が済んだらちょっと私とおいで」
「あ、はい」
石切丸に言われ、慌ててご飯を掻き込んで片付けた。
石切丸に連れて行かれたのは三日月の部屋で。
「こんにちは」
ついてきた清光と、部屋にいた小狐丸、5人で車座になった。
「単刀直入に言うね。慧さんには鶴丸さんの全部、大般若さんとの記憶の一部、昨日戻ってきてからの加州さん以外の記憶がない」
「え!?どゆこと?」
「さぁ」
清光に聞かれてもそう返すしかない。
覚えていないのだから罪悪感すら覚えない。
「もちろん昨夜の三日月さんとのことも覚えていない」
余裕そうな顔をしていた三日月がその言葉に目を見開いた。
「慧!?」
「?」
「どうしたらいいか相談しにきたんだ。このままだといろいろ支障をきたす」
落胆している三日月を小狐丸が宥め、石切丸がそう切り出す。
「鶴丸は全部で大般若は一部って何?」
「大般若さんのことは、あまり話したことのない高嶺の花、だと言っていたね」
「だってそうでしょう?」
石切丸に聞かれるとそうとしか答えられない。
「俺とのことは全部覚えてるんでしょ?なら俺は困ってないけど」
「そうもいかないでしょう?少なからず話が合わなくなりますよ?」
「そうお?もうずっと俺だけでいーじゃん。近侍も同衾も」
「なりません!!」
清光の言葉にいちいち小狐丸がキレている。
「どうすべきか…一度大般若と鶴丸に抱かせてみるか」
「え?無理です。そんなよく知らない方々と…」
にっかりと一期でさえ少し戸惑ったというのに…。というか清光以外全員戸惑ったし!!
「鶴丸かわいそ。大般若も昨日慧ちゃんに許可とりに来てたのにね。もう一度やり直してくれって」
清光が言ったが、
「それを言ったのは清光でしょう?」
「…まぁ俺も言ったけど、大般若も慧ちゃんの部屋で言ってたよ?」
「知らない」
戸惑う私に、
「慧さんは先程鶴丸さんの話をしたとき泣いたんだ。そのときはまだ記憶の狭間にいたんだと思う」