第15章 kiss for all the world
「…初めまして、ですよね?」
言った私に、
「は?何の冗談だ?あぁ、俺が酷いことしたから避けてやろうっていう?」
急に力なく眉を寄せるその男性。
「刀剣男士、なんですか?」
「どう考えてもそうだろう」
初めましての男士。いつ顕現したんだろう。
思い出せない。
「どしたの?慧ちゃん、鶴丸」
「清光」
私の隣に座って身体に腕を回してくる清光。
「鶴、丸さん?」
「何その呼び方。いつも鶴さんって呼んでたじゃん」
清光に言われたが判らない。そこに石切丸が、
「鶴丸さん、ちょっといいかい?」
鶴丸を連れて行ってしまった。
「私あの男士初めまして、だよね?」
清光に聞くと、
「何言ってんの?鶴丸とはもう長い付き合いでしょ」
ため息をつかれる。
そして、先程石切丸が鶴丸を連れて行った方から、
「はあ?」
問いつめるような大きな声が聞こえてきた。
「ご飯、美味しい。やっぱり光忠天才」
気にせず舌鼓を打っていると、
「おい慧、俺のこと本当に忘れちまったのか?」
鶴丸が駆け寄ってきて聞いた。
「…?忘れる?」
忘れるもなにも初めましてだし…。
「俺の名前判るか?」
「先程鶴丸さんだとお聞きしましたよ。これからよろしくお願いしますね」
初めて会った男士に言うのと同じく伝えると、
「っっ」
鶴丸の顔が歪む。
「鶴丸さん、今はやめておこうか」
石切丸がこちらにきて鶴丸を連れて行ってしまった。
「慧ちゃん?」
「なぁに?清光今日もかわいいね」
手を伸ばして頭を撫でると、清光は嬉しそうに目を細めた。
「今日も戦ってきてくれたんだよね?ありがとう」
「うん…」
「あーもう、また慧ちゃんと清光がいちゃついてる!」
そこへ安定が割り込んできて、
「さっきね、慧ちゃん道場に鍛練してるの見にきてくれたんだよ」
「えー、そうなの?俺まだ見てもらったことない!」
「でしょ?ねぇ慧ちゃん」
私を話に巻き込んできたが、
「道場…行ってないと思うけど…」
記憶にない。多分私は朝からずっと寝室にいたはず。
「うそ、来てたじゃん!亀甲も見たじゃん!」
「亀甲?亀さん?かめきち?」
「いや、浦島じゃないよ?」
違うのか。亀って漢字使ってるのに。