第1章 プロローグ
「本当に大丈夫なの?」
「うーん、食べたらちょっと横になりたいかも」
目眩のようにぐるぐる回る感覚。
「主、隣失礼するぜ」
着替えてきた鶴丸が清光と反対隣に座り食事を始めた。
そのまままた少しずつ食事を口に運んでいると、目の前に一期がやってくる。
「げ…」
小さく溢した清光を少し睨んでから座って私を正面から見据えてきた。
「主、今報告してもよろしいでしょうか?」
「…うん」
後で審神者部屋にくるとは言っていたが、私自身がうろうろしているので確実に捕まえられるタイミングを選んだのだろう。
それに関しては全く問題はないのだが、正直報告をしてくれている一期の話の内容が一切入ってこない。
脳が難しいことを拒んでいる、とでも言うべきか。
まずいな、なんて思っていると、
「大丈夫だ。俺が代わりに聞いといてやる」
そっと私の耳元に顔を近づけ、小さな声で鶴丸が言ってくれた。
一期の報告が終わっても食事が終わっていなかった私に、
「残り、俺が片付けようか?」
清光が聞いてくる。
「あ、うん…ごめん。ありがと…」
「ねぇ主しんどいんなら横になってなよ」
そう言ってトントンと膝を叩いた。
「膝枕は恥ずかしいからいいよ」
清光の優しさを拒んで、壁際に移動しうつぶせに寝転がると、
「ここで寝るのか?審神者部屋のほうがいいんじゃないか?」
鶴丸も気にしてくれたが、
「ううん、ここでいい。ここなら他の部隊が帰って来たのに気づけるはずだから。…てか帰ってきたら教えて?」
「そりゃあ構わないが…」
さっきお出迎え出来なかったことが悔やまれる。
すぅっと目を閉じようとした私の身体がふわりと浮いた。
「ぬしさま、ここでは身体が痛くなりますよ。小狐が胸をお貸ししましょう」
気づけば小狐丸の腕のなかに仕舞われていた。
「恥ずかしいのでしたらお顔は隠していてかまいませんよ」
私の顔を胸に押し付けたから素直に顔を埋めて隠した。
「ちょっと小狐丸!」
自分は拒まれたのにと、清光が抗議したが、
「ぬしさまの休息の邪魔はさせませんよ」
両腕で私を包み込んで隠す。
「ムカつく」
毒を吐いたあと立ち去る音が聞こえた。きっと食器を片付けに行ってくれたのだろう。
「ぬしさまは一体どうされたのやら…」
心配する声で意識が途絶えた。