第1章 プロローグ
「一期さんはどうなったの?」
まだうまく回らない頭でなんとか聞くと、
「撒けたと思ったんだけどね、油断してたらふたりで捕まってめちゃくちゃ怒られた」
小狐丸も一期も短気なんだもん、と膨れる。
「怪我はしてない?」
「まぁね。斬られたりはしてないよ」
あはは、と笑う清光。
あの勢いだと少し心配だったけど、さすがにそれはなかったようだ。
「まぁ、騒いだ罰で俺も昼食作るの手伝わされたけどね」
「じゃあ清光の作ったご飯食べられるの?」
「…さっき採ったトマト洗っただけ」
少しばつが悪そうに教えてくれた。
広間には帰ってきた第一部隊と第三部隊の面々ももう揃っているようだ。
それに、今日非番の男士たちも。
この本丸は広いしみんなが自由なもんだから、漸く顔を見れた男士もいる。
とりあえずみんな元気そうだ。よかった。
「主もう大丈夫かい?」
やっぱりまだ頭が回らなくて入り口でぼんやりとみんなが食事している姿を眺めている私に気づいた光忠が声を掛けてきた。
「あ、うん。…また私手伝えなかったや。ごめん」
「いいよ。審神者ってのはこの本丸にいるだけでかなりの力を使ってるみたいだし。身体の負担すごいと思うよ?」
「そうなの?」
「そうだよ!そもそも何かしらの力がないと審神者になんてなれないでしょ?」
入り口付近の席に座った私に光忠が教えてくれた。
もう数ヶ月審神者という仕事をしているが慣れていないだけ、だとしか思っていなかった。そもそも仕事って疲れるものだし。
「主はまだまだ知らないことが多いみたいだね。僕たちの知っていることならいくらでも教えてあげられるからなんでも聞いてね」
「ありがとう」
戻っていく光忠と入れ替わりに清光が食事を二人分持って戻ってきた。
「主今日はこんな端っこなの?」
「うん。なんとなく、ね」
「ふぅん。じゃー俺も、っと」
私の隣を迷うことなく陣取り、
「はいトマト」
私の唇に摘まんだトマトを押し付けてきた。
「…うん、ぉいし」
正直あまり食欲はないのだけど、と思いながら箸を持ち、少しずつ口に運んだ。
んー、やっぱりぼんやりするなぁ。
冷たくて食べやすいトマトばかりを食べていると、
「そんなトマト好きなの?俺のも食べる?」
気づいた清光が小皿を差し出してくる。
「ううん、清光食べなよ」