第15章 kiss for all the world
なんだか昨日戻ってきてからバタバタと気持ちが追いつかない状態が続いていて、何をしていいかも判らずぼんやりと審神者部屋の襖を開け外を眺めていると、
「慧さん、失礼するよ」
視界に石切丸が入ってきた。
「石切さん…」
「気分が優れないかい?良ければ加持祈祷でもしようか?」
聞いてくれる。
「うん…」
少しは気が晴れるかもしれない。そう思ってお願いすることにした。
石切丸について祈祷場まで歩く道すがら、途中の道場から鍛練をしている声が聞こえてくる。
「気になるのならそちらを先に見てみようか」
私の様子に気付き、方向を変えた。
道場には何振かの打刀たちの姿があった。
「慧ちゃーん!!」
気づいた安定が手を振り、その隙を大倶利伽羅が突く。
それにキレて反撃する安定。
「勢いすごいですね…」
「まぁ、戦場よりはよっぽど緩やかだけどもね」
石切丸が言ってくれた。戦場なんて想像もしたくはないけど、毎日そんなところに出陣しろと指示をだしているんだ。
私はどれだけ無知な審神者なのだろう。
カンカンと響く木刀の音と、オラオラと威嚇する声にビクついていると、
「怖いかい?」
「少し…」
「君は本当に平和な世の中に産まれたんだね」
言って石切丸が微笑む。
「かもしれませんね」
「世の中には知らなくていいことも沢山あるだろう。君にとっては戦もそうかもしれない。だからあまり気に病まないで。これは私たちの本分だからね」
「はい」
打ち合いが一段落したのだろう、汗を拭いながら安定が駆け寄ってきた。
「見に来たの初めてじゃない?どう?僕かっこよかったでしょ?」
矢継ぎ早に聞いてくる。
「うん」
「だいぶ沖田くんに近づけたかなぁって思ってるんだ」
へへっと笑う安定はかわいい。先程は人が変わったような気がしたのに。
「ご主人様!ぼくの稽古も見ていってくれよ!」
さらりと目の前に現れたのは、私が帰った日に拾って来て昨夜顕現したばかりの亀甲だった。
「うん判った」
独特の雰囲気の彼に、目を奪われていると、
「慧ちゃんと変態繋がりで仲良くなれそうだよねー」
安定が皮肉ってくる。
あはははと笑い声を発しながら亀甲は同田貫と打ち合っていた。
「私は変態じゃあない!」
安定の言葉を否定していると、