第15章 kiss for all the world
朝から洗濯を始めるのが日課になってしまっている。
とりあえず下着は絶対に自分で洗う。
他のものは誰かにやってもらうこともあるけど、今日は自分でシーツも洗って干した。
やってることは元の世界と何も変わらない。ただこっちは少しアナログな世界ではあるけども。
何だか痛む腰と重い頭でふらふらと厨に顔を出すと、迎えてくれたのは光忠。
「慧ちゃんまた熱出てるんじゃない?」
「んー…そうかな?なんかもういつもこんな気がしてきた…」
ぼんやりと返すと、
「熱冷まし、僕に少し預けとこう?このままじゃ飲まずにやり過ごしちゃうでしょ?」
言われてそれもそうかも、と了承した。
とりあえず審神者部屋から光忠が熱冷ましを取ってきてくれて、それを服用し、ぼんやりと宙を見ている私に、
「大丈夫?」
聞いてくる。
「うん。…ねぇ光忠今時間ある?」
「あるけど…?」
「コーヒー淹れてほしい…」
やっぱり飲まないと気分が上がらない。
というか光忠のコーヒーが飲みたい。
「オーケー。ちょっと待っててね」
とりあえず私を広間の方に移動させて、光忠はコーヒーを淹れ始めた。
広間には誰もいない。
私の審神者力が安定したからと、近侍の堀川が決めてくれた部隊でみんな出陣し、他は内番に行ってしまっていた。
すみっこで膝を抱えて広間を眺めながらコーヒーを待っていると、
「はいお待たせ」
マグカップを2つ持って光忠が来た。
「僕も付き合うよ」
そう言ってひとつを私に差し出してくれた。
「薬研って出陣してたっけ?」
「うん?多分。腰痛いの?」
「そー。また酷くなっちゃったかな、腰痛」
原因は多分三日月なんだろうけど。
「そんなに激しかったの?」
光忠が苦笑する。
「…もうみんな同衾のこと知ってるんだってね」
「そうだね。昨日慧ちゃんと加州くんがいない間に三日月さんたちが話したからね」
「どんな反応だった?」
「うーん、まぁ、慧ちゃんと加州くんならねって感じかな。鶴さんが、酷い頭痛と睡魔があることも話しちゃったからむしろ男士たちの方が申し訳ない感じにはなってたけどね」
「そっか…」
なんかやはり随分と私が正当化されている気がしなくもないけど。
「教えてくれてありがと」
とりあえず光忠に礼を伝えておいた。