第14章 Additional Times
「それでももしもお主に手を出そうという男士がいたら、そうだな」
少し考えて、
「俺を呼べ。名を叫べ。俺の名前で大抵の男士は怯むであろう。その隙に逃げろ」
なんて笑った。
「逃げろって」
えらく物理的な解決法じゃない、と思っていると、
「俺も男だ。男士たちの気持ちは判る。だから慧はあやつらのはぐときすくらいは拒まないでいてやってはくれぬか?」
少しカタコトの表現をした三日月に、
「…判りましたけど」
「けど?」
「イケメンとキスし放題なんて、私得過ぎません?」
「はっはっ、そのように思ってしまうのか、慧は。ならば存分に得をしてしまえばいい」
笑いながら私の着ているベビードールに手を掛けて脱がせた。
「?」
「素肌をくっつけて眠りたいというじじいの我が儘を聞いてくれ」
私を丸裸にすると、腰に腕を掛けて引き寄せる。
「じじいともきすはしてくれよ?」
「私からするんですか?」
「そうだな。慧からもされたいものだな」
言われて唇を寄せると、
「俺も大和守のように頬に紅をつけてもらおうか」
天下五剣がほっぺにキスマークつけてたらどれだけバカな本丸だと思われるんだろう。
「やめたほうがよくないですか?それ」
「いや、羨ましいものぞ?見せびらかせるのだからな。俺は加州たちのように皆の前で慧に抱きつく訳にもいかぬし」
「清光限定ですよ、多分」
「そうか?鶴丸もよく抱きついておるじゃないか。堀川とあと小狐丸。あやつは俺が出来ぬことを知っておいてぬけぬけと」
「あー…」
確かにそうかも。
「慧」
「はい」
「俺は慧を慕っておる。次は逃げる前に手を差し出せ。必ず助けるから」
「…はい」
「ではもう寝よう。じじいは眠い」
明かりを消してもぞもぞと布団を肌に掛け、私の頭を胸に押し付けた。
今日の愛され方は好きだった。不安が少なかった。
私はただの人間だ。
言葉にしてもらわないと相手の感情なんて判らない。
だけどそれは向こうも同じなのかもしれない。
神様だって私の感情が全部判るわけではないのだろう。
私も頑張って自分の気持ちを言葉にしなくちゃならないな、と思いながら目を閉じた。