第14章 Additional Times
「えー、ちょっとずるい!僕まだ慧ちゃんとキスしたことないのに、堀川と清光ばっかり!!ねぇ和泉守?」
膨れながら和泉守に振った安定だったが、
「オレは…なぁ」
濁したところで、
「やるぅ兼さん!さすが邪道キング!!」
堀川が手を叩いて喜んだ。
「何で!?何で!!絶対おかしいじゃんそれ!」
目を見開いた安定は、私の頬を両の掌で包み、そっと触れ合わせてくる。
「これでいい」
唇を離して満足そうに口角を上げた。
「ちょっとおたくのとこの刀、みんなキス魔になってるよ!」
清光がふざけて長曽祢に言うと、
「あのなぁ、それはお前が言うセリフじゃないだろう」
呆れて返した。
「ははっおんしらまっこと若いのう。よってたかって接吻でよろこんじゅう」
陸奥守はなんだか楽しそうだ。だから私もつられて笑うと、
「慧にゃあ笑顔が似合うきに」
頭を撫でてくれた。
そこへ突如訪れるあの痛みと睡魔。
「あ、えとごめ、ん。私ちょっと…」
すぐにでも審神者部屋に戻らないとここで落ちてしまう。
立ち上がりかけて、バランスを崩しそうになった私を支えてくれたのは、
「伽羅、さん?」
「眠いんだろ?こっちこい」
例のごとく腹に腕を回して抱き上げ広間の隅、みんなに背を向けて座り、私の頭を膝の上に乗せた。
「ここで寝てろ」
言われて素直に目を閉じる。
大倶利伽羅の指先がぎこちなく私の頬を撫でた。
「国永にさっき全部聞いた。悪かった」
そう聞こえた気がしたが、もう私の意識はここには居なかった。
目覚めるとまだ大倶利伽羅の膝枕で、目線を動かすと、大倶利伽羅も座ったまま眠っていた。
私が動いた弾みで目を開けると、
「起きたか?」
いつになく優しい目をしている。
「伽羅さん、ありがと」
身体を起こして礼を伝えた私に、
「いや、いい。俺がしたかったからしただけだ」
あ、ひょっとしてまた魔法的な?
だとしたら今なら思いも伝えやすいはず。
「ごめんなさい、不快な思いばかりさせてしまって」
「…それは俺の方だろう」
大倶利伽羅はもう目は合わせてくれないが、
「国永に聞いたんだ。あんたが審神者力を上げる代償に酷い頭痛と睡魔が襲ってくると。そんなことも知らずに俺はずっと…」
「言わなかったのは私の方だから」