第14章 Additional Times
「亀好きなの?」
清光が複雑そうな顔をしている。
かめきちを掌にのせて舐めるように観察している私に、
「かめきちも心配してたんだ」
浦島が言う。そして、
「亀好きに悪いやつはいないからね」
笑ってくれた。
かめきちを浦島のように肩に乗せ、再び食事を摂り始めると、
「慧は何しよってもかわええのう」
満面の笑みで陸奥守が言う。
「亀のせちょってもかわええなんちやつはそうそうおらんきに」
「ほんとだよね。かめきちも満更でもなさそうだし」
安定が言った。そして、
「ねぇ慧ちゃん、またキスしてよ。こないだの紅とれちゃったんだ」
なんて言ってくる。
「えーー!!それ僕もして欲しい!両側に!!」
堀川が手を挙げて食いついてきた。
「やだよ、恥ずかしい」
スルーしようとした私に、
「実はもう専用に紅買って来ちゃってたりして」
袂から安定が口紅を取り出して突きだした。
「何色?」
清光が反応する。
「桃色!前のはなんとなく清光っぽかったから」
蓋を開けて捻り出すと、また随分派手なピンクだった。
「えーー!慧さんは橙色とかのが似合うでしょ」
堀川がケチをつけてきた。それも、もうこの歳だと…。
「ねー、引いてみて?」
「…ご飯食べたらね」
期待に満ちた目に逆らえず了承し、元に戻すと机に立てて置いた。
食事を済ませ、かめきちを浦島に返し、食器を片付けて戻ると、口紅を手に安定が待っている。
「鏡ないから…」
まだ逃げれるもんならと言ったのだが、
「なら俺が引いてあげる」
清光が口紅を奪い取り、私の頬を掴んだ。
「大人しくしててね」
何て言いながらピンクの口紅を引かれ、
「似合う自信がないよ…」
言ったのだが、
「大丈夫!似合ってるって」
安定は嬉しそうだ。
「はい、お願い」
私の前に座って頬を突きだしてくる。
「えー…」
期待に満ちた目を拒めず、えいっと勢いをつけて安定の頬に口づけた。
「あははっやった!」
べったりと頬に口紅を付けた安定が笑う。
「僕も!僕も!」
目の前で手を挙げ続けてる堀川。
「もー…」
仕方ないなぁと顔を近づけると、
「やっぱこっちがいい」
正面を向いて唇が重なった。
「堀川!?」
安定に引き離された堀川の口元はピンク色だった。