第1章 プロローグ
鶴丸のキスは優しくて、だんだんと湿った音が響き始める。
鶴丸の舌が私の唇を舐め、少し力の抜け掛けた隙間から侵入してきた。
「っん…」
鶴丸の腕が私の頭を床に擦れないように抱き締め、身体には少し体重を掛けて逃げられないようにされている。
口内で私の舌を追いかけ回し、捕まえ、何度か吸い上げられた。
その度に私の芯がゾクリと疼く。
あぁ駄目だ。このままだと本気で鶴丸に抱かれたくなってしまう。
それにこんな体勢でキスを交わしているなんて、手入部屋にもう誰もいなくてよかった、なんて思っていると、ふと唇を離し、
「主、かわいい顔をしてくれるなよ」
血流が上がりまくって頬を真っ赤に染めてしまっているだろう私を見下ろして言った。
「っ鶴、さん…」
「なんだ?主はキスだけで腰抜けになっちまったのか?」
僅か震えている私に聞いてきた。
その声が耳元で響いてまたゾクリと芯が疼く。
「鶴、さん、もうダメ、だよ」
なんとしてでも拒否しないと、と涙目で訴えてみたのが間違いだった。
「俺はまだ満足していないぞ」
そう言うとまた唇を重ねてくる。
「んっ…」
身体が疼いて仕方がない。
無我夢中で私も鶴丸の唇を貪った。
「主ーどこー?」
少し遠くから清光の声が聞こえてくる。
「おや、主お迎えが来てしまったようだぜ」
その声に反応して鶴丸は私から離れ、腕を引き起こしてくれた。
鶴丸のキスに酔ってふらふらと立ち上がったところで清光が手入部屋を覗いてきた。
「あーこんなとこにいた。鶴丸ももう手入れ終わったんだ」
赤い顔でぼんやりとしている私に、
「主どうしたの?熱でもあるの?」
聞いて顔を近づけてくる。
「っっ…だい、じょぶ」
「そう?ならいいけど。お昼ご飯だよ。鶴丸も食べるでしょ?」
私の手を握り、誘導してくれる。
「あぁ、着替えたら行こう」
笑顔でそう答え、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれた。
「ぁ…」
「昼食を摂ったら少し眠るといい」
「やっぱ熱でもあるの?」
ぼんやりとしている私を気使ってくれる鶴丸の言葉が、清光はどうにも腑に落ちないらしい。
「なんなら加州も一緒に寝てやればいいさ」
「言われなくても!俺は誰かさんのお陰で今週は主お世話係なんだからね」
べぇっと舌を出しながら若干の皮肉を込めて清光が鶴丸に返した。