第14章 Additional Times
「着付け、誰に教わったの?」
お風呂に入ってまた着物を着ようとしている私の手からそれを奪いながら清光が聞いてきた。
「蜂須賀さん」
「あー…」
「似合ってるのに着ないのはもったいないって言われたから鵜呑みにして教えてもらった」
清光が器用に私を着付け始めている。
やはり私の締め方とは違う。
「蜂須賀も慧ちゃんのこと好きだからね、自分の良さ見せたかったのかもね」
「蜂須賀さん、美人だもんね」
「は?」
会話噛み合ってないよ、と清光が笑う。
「なんで慧ちゃん好きだと美人になるの?」
「えー?美人さんはみんな着付けできるものなんでしょ?清光もだし、一期さんも光忠も…」
「それ好き関係ないじゃん。蜂須賀は慧ちゃんが好きだからいいとこ見せて一歩抜け出したいだけなの!」
きゅっと帯を結び終えて、清光が正面に立った。
「ま、俺の方がずぅっと慧ちゃんのこと好きだから蜂須賀とかに負ける気なんてないんだけどね」
確認したあと口元で響くリップ音。
「どうする?今日はずっとここにいる?それともみんなに逢いに行く?」
「…逢いに行く」
「だよね。みんなも慧ちゃんに逢いたがってるからね。またきっと魔法がかかってるよ」
私の手をとり、部屋から出た。
広間に行くと、昼食時なのだろうほとんどの男士がいる。
今日は誰も出陣してないんだ、と清光が教えてくれた。
「慧!!」
「もーどこ行ってたんだよ!!三日月に連れてかれたのに、三日月だけが広間にいるし!!部屋にも居ないし!」
薬研と厚が声を上げる。
「ごめん…」
俯いた私の手を引いて、
「戻ってきてくれて良かった」
厚が私を抱き締めてくれた。
「わぁ、厚ダイターン」
茶化した乱に、
「うるせ」
一言言い返すものの離してくれる気はないらしい。
「厚?」
「オレ慧が好きだから」
小さな声でそう言って一度ぎゅっと力を込めて離してくれた。
見ていた薬研はなんだか優しい表情をしている。
その隣に一期の姿。私は正面に膝をついた。
「一期さん、痛い思いさせてごめんなさい」
「っ慧さん、私は私の意思で向かったのです。慧さんのせいじゃありません」
「だけど、私がもっと早く戻ってれば…」