第13章 まばたき
漸く落ち着き涙も止まった私に、
「もう全部を隠しておくのは無理かもな」
鶴丸が言う。
「慧は、受け止められるか?他の男士とそうなるの」
聞かれて小さく首を横に振った。
「だよな。俺もヤだしな」
今でも精一杯だ、と笑う。
「とりあえずは加州と俺だけってことにしておこうな、表向き」
「ぅん」
鶴丸の体温が温かくて安心する。
「ねぇ鶴さん」
「なんだ?」
「審神者力云々でなく、抱いてくれない?」
せっかく気が落ち着いてると言われても、大般若から先程の大倶利伽羅とのことでやはり私のなかは不完全燃焼になっている。
「したいのは山々なんだが…」
「三日月さんの許可がいるの?」
「そうではないが、好き勝手そういうことをする訳にはいかないんだ…」
宥めるように言ってくる鶴丸。
「…わかった。ごめん」
結局そうだ。本気で抱いてくれてもそうでなかったとしても、私の審神者としての力を高めるための行為。
自分の気持ちが求める時にしてもらえるわけじゃない。無理強いするものじゃない。
作業、という言葉がやはり相応しい気がしてしまう。
だけど、求めて断られる苦しみもまた、ふと蘇ってきて胸が締め付けられる。
私は一体どれほどのものを抱えてここに来ているんだろう。
「鶴さん疲れてるでしょ?私ひとりで仕事できるから大丈夫だよ」
言いながら鶴丸から離れた。
「…」
立ち上がってまた黙々と帯を結び直す私に、
「やっぱり抱く」
鶴丸はそう言って合わせた胸元を開いた。
「鶴さん、ここじゃ…」
「構わない。好きに声を出せばいい。みんなに知られてしまえばいい」
言いながら私に口づけた。舌を絡めて肌を撫でる。
「鶴さっ…お願いっっ」
必死で訴えたが、聞いてくれず、私の身体を反転させ壁に手をつけさせ着物を捲り上げ後ろから挿ってきた。
「ぁっっ」
まずい。下唇を噛んで必死で声を抑える。
「慧すまない」
「っぁっ…んっ…」
声を出さなくても肌がぶつかる音が響く。
違う。こんな抱かれ方されたいんじゃない。
涙が溢れてくる。
無理矢理高められてイかされて欲だけを満たされる。
こんなの求めてない。
悔しくて涙が止まらなかった。
だから私は、鶴丸が部屋から出て行ったあと、ひとり荷物をまとめて本丸から逃げた。