第13章 まばたき
「本当だ。慧は自分を犠牲にしてこの本丸を守ってるんだ」
鶴丸が言う。
そんなに私を正当化しないで欲しい。悲しくなる。苦しくなる。
「じゃあ数日前に俺が聞いたときも…?」
答えられず俯く私に近づき鶴丸が着物を合わせてくれた。
「すまんな、慧。言うべきではないとは思っていたが…」
「しょうがない。鶴さんのせいじゃあないから」
泣きそうになる私を大倶利伽羅はひたすら睨み付けてくる。
「そんな大事なこと、お前らだけで抱えて隠してたのか?」
「そうだ。慧は悪くない。加州も悪くない。俺が全て巻き込んだ」
鶴丸がなぜだか矢面に立とうとしている。なんでそんなこと…。
「それで、悪いんだが伽羅坊がどれだけ慧を慕っていようがこれ以上は容認できない。許してくれ」
鶴丸が大倶利伽羅に頭を下げる。
これ以上私の負担にならないようにしてくれようとしているんだ。
「…俺には関係ないし興味もない。ただムカついたからやっただけだ」
そう言って大倶利伽羅は部屋から出て行ってしまった。
「…」
「大丈夫か?」
鶴丸は私の身体を抱き締めて擦ってくれる。思っている以上に震える身体はすぐには収まりそうになかった。
「鶴さ、ごめ…」
朝言われたばかりなのに。まさかこんなすぐに起こるとは思ってもみなかった。
「最近慧の力は溢れ過ぎてたからな、昂った男士が手を出すのは目に見えてた。まさか伽羅坊がそうなるとは思っていなかったが…」
「鶴さん、大丈夫?痛くない?」
「俺は殴った側だから…」
「違う。ここ…」
鶴丸の胸をトンと叩くと、
「ちょこっと、な」
なんて笑ってくれた。
「大丈夫だ。伽羅坊も大人だ。すぐにいつも通りになるさ」
鶴丸は抱き締めてずっと頭と背中を擦ってくれている。
「それにしても今はやけに気が落ち着いてるな」
「そうなの?」
だとしたら大般若のお陰だろう。
「もう、帰るか?」
「鶴さんは私を帰したい?」
「いや」
「だったらまだ居る」
そう言って鶴丸の胸に顔を押し付けた。
「ならば俺が慧を守ろう」
静かに涙を流す私をただ黙って擦り続けてくれていた。
「鶴さんごめんね」
私は感情に任せてただゆっくり鶴丸の着物に涙を染み込ませるしか出来なかった。