第1章 プロローグ
にやりと笑う和泉守。
「結構柔らけぇんだな」
「っっババアだからよっ!!」
和泉守の右手首をぎゅうっと掴んで爪を立て、
「いってぇ!」
力の緩んだ和泉守の手を胸からひっぺがした。
「もー兼さんもなんなわけ?急に」
「いーじゃねぇか減るもんじゃなし」
そう言ってまたにやりと笑うと、私の腰に右腕を回し引き寄せ、口づけてきた。
「っっ!!」
「ちったぁ大人しくしてろ」
わずか唇を離してそう言うと、左掌で私の後頭部を包む。
「んっんんー」
いくら不倫にならないと言われたからと言っても、これじゃあ心臓がもたない!
だのに身動きの取れない私の唇を割り舌を差し込んできた。
「んーっ」
必死で和泉守の服を掴んで抵抗していると、
「こりゃ驚いた」
鶴丸の声が聞こえた。
その弾みで漸く唇を離してくれる和泉守。
私は苦しさと恥ずかしさと戸惑いとよくわからない感情が渦巻いて涙目だ。
「とりあえず今日はこのくらいにしといたらぁ」
私から離れ、飄々と和泉守は去っていった。
「もう、なんなのぉ??」
鶴丸のいた部屋の入り口に座り込んだ私に、
「主、大丈夫か?」
目線を合わせるようにしゃがんだ鶴丸が聞いてくる。
「そもそも誰のせいよ!」
「え、俺なのか?」
「以外にいないでしょ!!」
ばかぁ、と顔を掌で覆うと、すまん、と小さく聞こえ恐る恐る抱き締めてきた。
「…主のことが好きなのは俺だけじゃないんだな」
少し元気のない声。
「俺はまた主とキスをしたくて少し張り切ったら、隙を突かれてな。…これじゃあ無事に帰ったとは言えないよな」
「そんなことないよ!折れずに戻ってきてくれてありがとう。命賭けて戦ってきてくれてありがとう。おかえりなさい」
落ち込みかけてる鶴丸を慰めたくて私からも抱き締め返した。
「…なぁ主、キスしてもいいか?」
「ダメですー」
それとこれとは別だ、と全力で拒否をしたが、
「そう言われて俺がおとなしく引き下がるわけないだろう?」
そのまま手入部屋に押し倒すように体重を掛けて身体を密着させてきた。
声にはまた覇気が戻っているどころかどこか艶っぽい響きさえもまじっている。
「鶴、さん?」
「俺が満足するまでさせてもらおうか」
そう言って鶴丸は私の唇を塞いだ。
もう拒みきれずに私は瞼を下ろした。