第13章 まばたき
「出陣前だろう?発情してるんじゃない!」
鶴丸の頭を叩き、私を鶴丸から剥がした。
「伽羅坊も慧とキスしてみればいーじゃねぇか。俺の気持ちが判るぞ?」
「…っ俺はいい。早く行くぞ」
鶴丸のキスで蕩けそうな目をした私を一瞥し、大倶利伽羅は部屋から出て行ってしまった。
いつも大倶利伽羅に対してのタイミングが悪い。機嫌を損ねさせて怒らせて、の繰り返しだ。
「慧、またな」
鶴丸はもう一度私に音を立てて口づけて出ていった。
私も見送ろうと慌てて立ち上がり玄関へ急ぐ。
半ば転びそうになっている私を長曽祢が受け止めた。
「どうした慧ちゃん」
「あ、ありがと。なんか焦っちゃって…」
ほんとは鶴丸のキスで腰砕けになりかけてただけなんだけど。
「今日は長曽祢さんが近侍だったね」
「そうだが、とりあえず出陣だから」
笑って私の頭を撫でる。
「いってらっしゃい。よろしくお願いします」
玄関を出ていこうとする男士たちに大声で伝えた。
ちょっと先で清光が大きく手を振っている。
鶴丸はなぜか投げキッスをしていて、また大倶利伽羅に叩かれていた。
見送りが済んで、久しぶりに今日は畑に行ってみようかと外に出てみた。
和装なので収穫の方を手伝おうと意気込んで、
「私も来ました」
既に畑で作業してる男士に声を掛けると、
「慧だ」
「慧が来た」
口々に私を呼び捨てる。どうやらやんちゃな短刀くんたちがいるようだ。
「今日のトマトも立派だねぇ」
「慧何か野菜でおやつとかつくれないか?」
キラキラした目で包丁が聞いてきた。
「そうねー。うーんホットケーキとかやってみる?なんか出来そうじゃない?」
「美味そうだな。俺も一緒にやる!」
愛染が立候補してくる。
「僕も…」
「うん。小夜くんも一緒にやろうね」
そう返すと嬉しそうに目が緩んだ。
「ならはりきって当番すませないとな!」
厚がみんなに声をかけた。やはりこういうときにはきちんとまとめてくる、頼りがいのあるコだ。
「ねぇ慧。おやつできたら兄さまにも食べさせたい」
「だね。沢山作ろうね」
「うん」
短刀くんたちは強いのにみんな純粋でとても可愛い。
きゅんきゅんする母心を抑えながらトマトを大量に収穫した。