第13章 まばたき
「慧と寝るとみんな無双になっちまうな」
今朝は小狐丸が無双状態らしい。
少し眉を歪めて言うのは鶴丸だ。
そして出陣前になぜだか審神者部屋に来ているのだ。
「もう、無理だね。あんな愛され方ばかりされてたら好きって気持ちが溢れちゃうもん」
全力で私を快楽に導いてくれて、無意識下で求めてしまう。好きだと思ってしまう。
「すごいぜ、この気」
戦闘服姿の鶴丸が胡座をかきながら言った。
「そうなの?」
「あぁ。最近毎日だからな。もう薄々勘づいてる男士はいるだろうな」
「…薬研は知ってる」
「そうか」
鶴丸は特に驚いた風でもなかった。
「怖いのは、それで慧に同意なく手を出すやつが出ることなんだが…」
「そんなひといるかな?」
「いや、いるだろう絶対。俺たちが出陣してる間は守りきれないこともあるかもしれないが」
私には思い当たる男士はいないけど。
「鶴さんが一番危なくない?」
「俺か?なんで」
「だってきっかけ全部鶴さんじゃん」
「加州だろ?」
私の言い分は気に入らないらしい。清光に擦り付けた。
「何か用があって出陣前に来たんじゃないの?」
私は鶴丸の戦闘服姿は好きだ。本気で格好いいと思う。
本人には言ってあげないけど。
「そうだった。慧来い」
私を膝の上に座るように両腕を広げてみせる。
「?」
なんだい?と誘われるまま鶴丸の前に膝をつくと、
「跨がれよ」
文句をつけてきた。
「やだよ」
朝清光に着付けて貰ったばっかだもん。崩したくない。
「まぁいいか。キスしてくれ」
「は?」
私の手を掴んで肩に乗せさせる。そして鶴丸の腕は私の腰と背中に回され引き寄せた。
「ちょと!!」
「旦那様にはいってらっしゃいのキスをするものなのだろう?」
「誰が旦那だって?」
「俺だ。驚いたか」
言いながら腰の手に力を込めた。
期待に満ちたその目には逆らえず、肩に置いた手を鶴丸の背中に滑らせる。
「いってらっしゃい」
触れ合う寸前そう言って唇を合わせた。
予想通りすぐ離してくれる気はないらしく、湿っぽさが増し、舌が絡んだ。
「んっっ…」
夢中になりかけたところで、
「国永、いい加減行くぞ…って何やってんだお前ら!!」
鶴丸を迎えに来たのだろう大倶利伽羅の声に怒りが混じった。