第12章 BE IN SIGHT
「別にそのことに関しての驚きとかは全くないですけど…」
このやりとり、前にも聞いたことあるような。
「なら僕も慧さんが好きだから距離感近くてもいいんですか?」
「堀川はいつも近いじゃないか」
今更だろうと鶴丸は笑った。
「ところで、ここには茶室はあるのかい?」
「はい、離れに」
「どーせ誰も使ってないんだから鶯丸が使えばいい」
鶴丸はにやっと笑いながら言った。
「そうだな。そうさせてもらおう」
鶯丸は疑いもせず受け入れてくれた。
あとで一旦確認に行っとかなくちゃ。
鶯丸への挨拶も済み、先程のシーツを洗濯して外に干した。
まだ日が高いし夏場だから夕方までには乾くかもしれない。
そして茶室を確認に行った。特に以前鶴丸と使ったときの痕跡は無さそうだ。
中に入り窓を開けたりして空気を入れ換えていると、
「ここなんだね」
声が聞こえた。振り返ると鶯丸の姿。
「どうですか?使えそうですか?」
「あぁ。君は茶の心得はあるのかい?」
「いえ、ごめんなさい」
お茶に関してはほぼ判らない。
「構わないさ。だけど今度作法を教えるから飲みにこないかい?慧に飲んでほしい」
「はい。よろしくお願いします」
そのときには清光に着物の気付けを頼もう。お茶のレッスンが受けられるなんてこの本丸凄いな。
「…この部屋には君の気が少し強く感じられるね」
「あ…ごめんなさい。先日見つけたときに畳のいい香りに誘われてついお昼寝を…」
謝ると、
「そうだったのかい。慧の昼寝場所を奪ってしまうかな?」
「いえいえそんな。鶯丸さんが使ってください。私はどこの部屋でも寝れますから」
笑うと満足そうに微笑んでくれた。
「何か要るものがあったら言ってくださいね。用意します」
「そうだね。また伝えるよ」
鶯丸は暫く茶室に居るようだったので、私は審神者部屋に戻ることにした。
そして帰ってきた部隊の報告を受け、最後にやって来た鶴丸。
「慧申し訳なかった」
部屋に入るなり頭を下げてくる。
「え!?ちょと鶴さん?」
「まさか自分が抑えられなくなるとは、俺もまだまだだな」
私の前に胡座をかきながら言った。
「薬研はどうやって治した?」
「あー…整体、的な?」
あの衝撃は初めてでかなり痛かった。