第12章 BE IN SIGHT
部屋に寄り、解熱剤を持って厨を覗くと歌仙と堀川が片付け後の休憩をしていた。
光忠がいると思ったがいない。
「おや慧さん。仕事は一段落したのかい?」
「あ、うん」
私に気付いた歌仙が昼食を用意してくれる。
「燭台切くんが慧さんは仕事が忙しいからあとで出してくれと言っていたからね」
「ありがとう。光忠は?」
「彼はね、急に戦闘服に着替えて出て行ってしまったよ。全くどうしたものか」
あぁ、やはり光忠も無双ったのか。
「そういえば慧さん、さっき鶴丸さんたちの隊が帰ってきましたよ!驚きのお土産もありました」
鶴丸の口癖を真似ながら堀川が嬉しそうに教えてくれる。
「お土産?」
「はい。でもとりあえずご飯食べちゃってください」
ふたりは私の食事に付き合ってくれるらしく、棚からお菓子を出してきた。
食事を終え、解熱剤を飲み終わると、堀川が私の手をとる。
「お土産、見に行きましょう」
私を厨から連れ出した。
「どこにあるの?」
「鶴丸さんの部屋です」
そういってたどりついた鶴丸の部屋の前で声をかけた。
「堀川です。慧さん連れてきました」
そう言って障子を開けると鶴丸と大きな刀。
「おー慧!土産だぞ。驚いたか?顕現してみてくれ」
言われて膝をつき、手を翳すと、緑色が印象的な線の細い男士が目の前に立った。
「初めまして。この本丸へようこそ。主です…。よろしくお願いいたします」
「鶯丸だ。よろしく頼む」
鶯丸…前に茶室で鶴丸が言ってたひとだ。
思わず鶴丸を見つめると、どや顔をしている。
「鶯丸、主の名前は慧だ。昨日から主と呼ばず慧と呼ぶことになった。敬称は好きにしたらいいがそう呼んでやってくれ」
「あぁ判った。俺も慧と呼ばせて貰おう」
笑顔で受け入れてくれた。
「ところで慧」
鶴丸が私をちょいちょいと手招く。
近づくと、
「腰、平気なのか?」
耳元で私だけに聞こえる声で聞いてきた。
「あ、うん。薬研に治してもらった」
そう言うと、
「何ふたりで内緒話してるんですか?昨日もだけど慧さんと鶴丸さん、距離近すぎですよ!」
「そりゃあ俺が慧を好きだからだ。どうだ驚いたか」
鶴丸は笑う。