第12章 BE IN SIGHT
「にっかりさん、ありがと」
「っどうして!?」
「にっかりさんの優しさだったんでしょう?怖がってごめんなさい」
頭を下げると、
「僕の主はこんな突拍子もない捉え方ばかりをする。だから離れられないし守りたくなるんだよ」
そう言って私の頭を撫でてくれた。そして、
「三日月さん、僕はルールを破ったからね。暫く僕の番はなくて構わないよ」
そう言ってにっかりは部屋から出て行ってしまった。
「…」
「大事ないか?」
「…はい。平気です。ありがとうございます」
近づいて来て隣に座り私の肩を抱いて宥めてくれる三日月。
「すまぬな、俺がすぐに助けてやれず、慧にも青江にもツラい思いをさせてしまった」
青い三日月の浮かぶ瞳が私を見つめる。
そして、ゆっくりそれを隠すように瞼を下ろすと私に口づけた。
先程までの頭痛が驚くほどに消えていく。
「頭痛がする度にお主の気は乱れる。酷ければ酷いほど荒れる。だが、そこに至るまでのお主の出す力はこの本丸に満たされ続けていて、男士たちを昂らせるのだ。青江にはそれが手にとるように判ってしまうのだろうな。もっと俺が気を使うべきだった」
三日月はふと肩を落とした。
「私も、ブレないようにもっと頑張ります。おかしいときは容赦なく叱ってください」
「そのように気張るな。慧は慧のままで居ればいい」
三日月の言葉は優しい。
「なんだか私たちみんな不器用ですね」
「やもしれんな。…しかし慧その格好はどうした?燭台切の趣味か?」
「…いえ、自分で着ました。この部屋にあったので…」
今さらだがベビードールの胸元を布団で隠す。
「そうか。次の俺の時にもぜひ着てくれ」
満面の笑みで言ってくれた。きっと私がこれ以上気に病まないための三日月の気づかいだろう。
「じじいは戦闘でくたびれた。ここの風呂に共に入って行ってもよいか?」
「そうですね。背中、流しますよ」
私も汗と精液、愛液なんかでベタベタの身体を洗いたかったから了承した。
そして、今度は自分でシーツを取り替え、先程まで着ていたベビードールを自分で洗って干した。
さすがに見られるのは恥ずかしかったしね。
空腹を感じた私は厨に向かった。その道中にっかりは大丈夫だろうかと、そればかりが気がかりだった。