第12章 BE IN SIGHT
とりあえずいつも通り審神者としての仕事は済ませておいた。
あとは部隊が帰ってきたら報告を受ければいい。
「昨日の宴会分、ほんとに大丈夫なの?」
帳簿を開いていた私に光忠が聞いてきた。
「うん。見る?最近うちめちゃくちゃ調子いいから小判の回収量すごいんだよね。長谷部が言ってたけど特別金ってのも出るみたいだし」
帳簿を覗き込みながら、
「ふーん。ほんとだ。でもこれって全部慧ちゃんの力のお陰でしょ?」
なんだか含みのある言い方。
「違うよ。みんなのお陰。私はここにいるだけだもの」
そう言うと、光忠は嬉しそうに笑ってくれた。
「ところで慧ちゃん、今日の昼前の、なんだけど…」
光忠が少し言いにくそうに言葉を並べる。
「腰、痛いんだよね?」
「あ、うん。でも…」
やらなきゃなんない仕事だ。
「僕の予定なんだけど、優しくする自信なくて…カッコ悪いんだけど…」
そこまで言って、
「慧ー、入るぜ」
声が掛かり薬研が入ってきた。
「熱冷まし持ってきた。どうだ?前のはまだ効くか?」
「うん。もう下がったと思う」
言うと薬研の顔が近づき私の額に触れた。
「だな。無理したんだろ?また」
「また?」
「慧は俺たちのことばっか考えてそうだからな。ちったぁ自分の身体のことも気使ってやったほうがいいぜ?その腰痛ってのもヤりすぎだろ?」
と布団を押し入れから出して敷き、その上に私をうつ伏せに寝かせた。
服の上から掌を当てて撫で回してくる。
「だいたいここの男士節操ねーんだから、全部任せてたら痛い目見るぜ?」
おや?何か言い方が…。
「どうせ加州だけじゃないんだろ?なぁ燭台切」
「や…げんっくん!?」
振られて光忠は若干パニックになっている。
「言ったろ?俺は何でも知ってるって。心配すんな、他のやつには言わねぇから」
言いながら当てた掌に力を込めてくる。
「ったぁ!」
ぐきっと音が聞こえた気がする。
「歪んでんだよ、いろいろ。どうせ子ども産んでからも大したケアとかしなかったんだろ?ツケが回ってきたんだっ、て」
またゴキっと音が聞こえた。
「うぅっっ」
言い返せない。
「たまには慧の方が主導権握んねーと、なっ」
もう一度ぐきっと音が聞こえ薬研は手を離してくれた。