第12章 BE IN SIGHT
強がってはみたが、ほんとはまだめちゃくちゃ痛い。
でも心配掛けたくないってほうがどうしても勝ってしまう。
「大丈夫?」
しかしあまりにもゆっくり歩くもんだから光忠にはバレた。
「ちょっとごめんね」
そう言うと光忠は私を縦に抱き上げて運ぶ。荷物にされてしまっている。
「どした燭台切」
廊下を進んでいるとたまたまいた薬研に声を掛けられた。
「慧ちゃん腰痛酷くて歩けないみたいで」
「そうなのか?慧湿布いるか?」
「んー。とりあえず熱冷ましがいるー」
光忠に抱っこされたままの状態で言うと、
「まだ残ってるか?」
「あるはず。でも追加で作って欲しい」
熱が出る度に飲んでいるからもう底をつきそうだ。
「判った。あとで部屋に持ってく」
薬研と別れぼんやりした私をそのまま光忠は審神者部屋まで連れて行ってくれた。
下ろしてもらい、痛む腰を宥めながら畳に座りながら、
「みんな主とか大将って呼んでくれなくなっちゃった」
「主の方が良かった?」
光忠も座って目線を合わせてくれた。
「ううん、そういう訳じゃなくて。嬉しいんだけど恥ずかしいっていうかくすぐったくて…」
「そう?僕は慧ちゃんって呼べるようになって嬉しいし、多分みんなもそうだと思うけど?」
「…伽羅さん、呼んでくれるかな?」
「どうかなぁ。結構難しそうだよね」
やはり大倶利伽羅は無理だろうか。そう思うとなんとなくだけど大倶利伽羅は自分の旦那に似ている気もしてきた。
「仕事できる?」
「薬飲んでからにする」
ぼんやりした頭で光忠に薬の場所を教え持ってきてもらった。
「お水とってくるね」
先ほどの食器を持って光忠は一度部屋を出た。
その間に手に届く範囲にある仕事道具を用意し、開いておいた。
あー。セックスのしすぎで腰痛とか、どれだけお盛んなんだか。
まさかこの歳になってこんなことになろうとは。
「慧ちゃんお水持ってきたよ」
戻ってきた光忠から水を受け取り薬を流し込んだ。
「ねぇ、あの部屋すぐ判った?」
「うん。でもね、あの部屋主と関係持ったひとしか入れないように小狐丸さんが何かしたって」
「何か?」
「僕にもよく判らないけど狐的な何か?だから他の男士には絶対見つからないみたいだよ」
不思議な話だ。