第11章 Nameless fighter
長曽祢と酒を呑んでいるとふわりと一瞬身体が浮き、気づけば和泉守の膝に座らされてしまっていた。
「っと兼さん?」
「酒我慢したんだ。ちょっとくれぇいいだろ?」
私の背中に顔を押し付けてくる。
「ちょ…!!」
「はいそこまで」
ボディーガード清光が復活してきて和泉守の顔を私から離した。
「調子乗らない!花魁は高嶺の花だよ!?」
「…膝に乗せとくだけならいいか?」
「えー…いいよ」
なぜ全て清光の許可制なのかは判らないがとりあえずしばらくは和泉守の膝の上らしい。
大人しくその状態で安定にお酌をした。
「慧ちゃん、あとで僕の膝も乗る?」
「いや、それは申し訳ない…」
「なんでー?太刀ならいいのに、打刀はダメなのー?脇差は侍らせてもらえるし、打刀って損しかないじゃん」
ふてくされる安定に、
「オレは打刀だぜ?」
和泉守が言ってまたキレそうになる安定。
「えと、じゃあちょっとだけ…」
和泉守に離してもらい、安定の膝に座ると、
「ヤバイ、安定見えない」
「二人羽織感!」
清光と堀川が爆笑している。だから言ったじゃん、申し訳ないって。
「あーもうっ」
言いながら私の腹に腕を回して抱き締めてきた。
そして、
「ほんとに清光とだけなの?」
なんて聞いてくる。
「…」
即答しないでいると、
「慧を疑ってやるな。そういったことは大きな声で言うもんじゃないだろう」
和泉守が助け船を出してくれた。
「だけど…」
「大和守、俺が決めたことだ。文句があるのなら俺に言え」
三日月が少し離れたところから声を張った。
そして、
「慧、三条の元へも来ぬか?」
手を差し伸ばしてくれる。
「…行ってもい?」
安定に聞くと、私の背中にちゅうっと口づけて、
「いーよ」
手を離してくれる。
「ありがと」
振り返って、お返しに安定の頬に口づけた。
頬にはがっつり口紅の痕。
「ぁ…」
「ごめん、ついちゃった」
謝って三日月のところへ向かうと、
「えー、いいなぁ、安定さん」
堀川の嘆き声が聞こえた。
三条の元でしばらく呑んで、そろそろお開きムードになってきた頃、とりあえずひとりで隠し部屋に向かうことにした。
少し呑みすぎたかも…。
部屋に入るなりベッドに飛び込み、そのまま目を閉じた。