第11章 Nameless fighter
ほんとに嬉しくて、涙の乾かない顔で笑顔を作ると、
「慧って呼びながら啼かせたいもんだ」
大般若が言った。
「ねー皆聞いた?主慧ちゃんっていうんだってー」
清光が少し大きめな声で言う。
お陰で本丸の男士全員に私の名前が知られてしまうことになった。
「いーじゃねぇか、慧」
和泉守は今日は酔っぱらっていないのか起きてる。
不思議そうに見つめていた私に気づいたのか、
「兼さん今日可愛い慧さんずっと見てたいからってこれお水」
和泉守の持っているお猪口を指差しながら堀川がネタばらしをしてくれた。
「おいこら言うな国広」
そのやりとりに周りは大爆笑だ。
「ボクも慧様って呼びますね」
物吉が宣言してくれたが、
「様はいらない、かなぁ」
言うと、
「じゃあボクも慧ちゃん、でいいですか?」
ちゃん付けは正直恥ずかしいけど、
「ぅん」
頑張って言ってくれた物吉が可愛くて頷いた。
「慧、慧こっちこい!」
名前を呼びながら鶴丸が手招いている。
大般若から離れて移動したが、もう清光はついてこなかった。
もう全員回ったからボディーガードの役を降りたのだろう。
鶴丸の傍に座りお酌していると、
「その格好、本当いいな」
褒めてくれる。そして私の耳元に顔を近づけると、
「今夜は俺だ。漸くだな」
嬉しそうに教えてくれた。
「そうなの?」
「俺も驚いた」
鶴丸はニコニコしている。ホントどういう基準で決まってるんだろう。
多分三日月の気まぐれだろうけど。
「ねぇ主、てか慧ちゃん」
急に肩を叩かれ振り返ると安定がいて、
「もっかい新選組の方来てよ」
言われ鶴丸を見ると、
「行ってこい」
と言ってくれたから大人しく新選組の輪に入ることにした。
「呑んでるか?」
長曽祢が聞きながら私のお猪口に酒を注いでくれる。
その向こうには蜂須賀と浦島もいた。
「貴女はこんな男だらけの中でそんな格好をして危険だとは思わないのか?」
蜂須賀が聞いてくる。
「危険とかは感じないし、何かあったら清光とか助けてくれそうだから…」
言うと、
「そんな主だから俺たち居心地いんだよな、慧ちゃん」
長曽祢が蜂須賀を宥めてくれた。