第11章 Nameless fighter
光忠に好き勝手買ってきていいって指示を出したら楽しくなってしまったらしく、広間には普段作らないようなものとか、高級食材なんかも並んでいた。
なんだか富豪になった気分だ。
皆が稼いでくれたお金、皆に還元してなにひとつ問題などないだろう。
それに、集まった男士たちが皆笑顔になっていくのが楽しい。嬉しい。
「主来て、手直ししよ」
まだ布を羽織ったままの私を清光が手招く。
長谷部の号令で宴会が始まって、皆が騒ぎ始めた頃、手直しの済んだ私の布を清光が落とし徳利を持たせた。
気づいたのは光忠で、
「主!?どうしたの?」
「似合うかな?」
ギャル雑誌で見たように胸元はかなり際どく開き、肩は全開。裾も少し長めになるように直された。
「わぁ、可愛い!こっちきて!!」
全力で手招いてくる堀川に近づくと、
「兼さん大好物でしょ、こういうの」
「あぁ!最高じゃねぇか!」
嬉しそうに顔を綻ばせてくれた。
「今日は私がキャバ嬢になってもてなしちゃおうかなって」
ふふっと笑うと、
「キャバ嬢は判らんが最高だな」
長曽祢も見つめてくる。
「今日だけは凝視してもいいよ」
「えーすごいすごい!触るのは?」
「だめ」
「なんでー」
既に触れそうな位置まで来ていた安定の手を清光がはたいた。
「おんし、ワシにも酌してくれ」
長曽祢に酌していると、陸奥守も呼んでくる。
近づくと腰に手を回された。
「あーまっことえー匂いがする」
顔を胸元に近づけたのを見て、
「お触りだめっていったじゃん」
安定が文句を言ったが、
「こーゆうんは聞くからいかんのちや」
「むっくん?」
「柔らかいのぉ」
胸の膨らみに頬擦りをしてきた。
「さすがにそれはダメでしょ」
私のボディーガードとして付いてきていた清光が、陸奥守を離した。
「少しなら良くない?」
「ダメ。絶対脱がされるやつじゃんそれ」
しっかり一線引いとこうね、と清光。なかなか厳しい。
「幕末刀は欲望丸出しだな」
薬研の声が聞こえ、振り返ると眼鏡越しに目が合った。
「大将やったな」
「30半ばのババアでも見れるもんでしょ?」
聞いた私に、
「あぁ。今日は特に若く見える」
と薬研。
「それなんだけど、私って前からこんな顔だった?」
「ははっ、なんだそりゃ。大将はずっと可愛いぜ?」