第11章 Nameless fighter
「まだその格好は隠しておけ」
とりあえずその布を羽織って帯より上が見えないように隠した。
光忠部屋にいるかな?とりあえず行ってみよう。
「光忠、いる?」
部屋の前で声を掛けると、
「光忠はいない」
大倶利伽羅が顔を出した。
「そか…行き先は判る?」
「多分厨だろ。…てかあんた今日化粧してんのか」
めんどくさそうな声で言う。
「あ、うん」
そういえば結構濃いメイクしたんだった。
「髪も。何なんだ?休みだからって浮かれてんのか?」
「…そう。ありがと教えてくれて」
なんだか言い方に棘を感じたので適当に肯定し、礼を言って厨に向かうことにした。
私だって化粧したいし、髪だってキレイにしてもいいじゃない。ババアでも女だもん!!
ひとり廊下を進み、厨にたどり着くと言われた通り光忠がいた。
「光忠、今日はひとり?」
「あぁ、主。みんな休みでやりたいことあるみたいでね。てか可愛いね今日」
「ありがと。清光がやってくれたの。でもね、さっき伽羅さんには浮かれてるのかって言われちゃった」
「僕はいいと思うけど。伽羅ちゃんは素直じゃないよね。それで僕に何か用だった?」
何か作る予定だったのか開いていた本を閉じて聞いてくれる。
「あのね、今日は非番だから町の何か出来合いのものお持ち帰りして宴会したいなぁって伝えにきたの。だから光忠料理サボりなよって話」
「あぁ、そうだったのかい?ならば甘えさせてもらうよ」
笑顔で受け入れてくれた。
「お金はいっぱいあるから、誰か連れて買いにいって欲しいんだけど…」
「オーケー。主は行かないの?」
「行ける格好じゃないから今日はやめときます…」
「そか。んじゃあ伽羅ちゃんとか力有り余ってそうな同田貫くんとか蜻蛉さんとか声かけてみるよ」
「その間に明日の計画立てとくね」
踵を返した私を光忠の腕が包んだ。
「どうしてこんなに暑いのに布を羽織ってるんだい?」
「…秘密」
まだ見せるなという三日月からのお達しだ。隠し通して見せよう。
「主が紅を差してるなんて珍しいじゃない。買い出しのお駄賃にキスしていい?」
「付くよ?」
「いいよ」
そう言って後ろから覗き込むようにして唇を重ねた。
光忠のキスはいつも甘くて少し色っぽい。
「やっぱり付いたよ?」
「いいんじゃない?」
口元を指で拭った。